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ほの研ブログ - ほのぼの研究所2022年度合同研修会報告

ほのぼの研究所2022年度合同研修会報告

カテゴリ : 
ほの研日誌 » 行事
執筆 : 
NagahisaH 2023-4-9 8:00
 2023年3月14日10時より、ほのぼの研究所恒例の2022年度同合同研修をオンラインにて開催いたしました。開会の挨拶で大武代表理事・所長が共想法を基点に認知症にならない方法について共に考え行動するために設立した当法人の存在意義を確認するともに、1年間得られた知見を持ち寄り、持ち帰り、次の1年につなげる 参考にするために行うという開催目的と意義を述べました。
 また、改めて共想法の基本概念を述べるとともに、コロナ禍に於いて取り入れた新しい活動方式(遠隔共想法)の3年間の進捗状況を説明しました。
 当日は、2月14日に共同研究契約を締結した岸和田市の関係者の方々、国立情報学研究所の宇野毅明先生に加えて、協働事業者(埼玉県の認定NPO法人きらりびとみやしろ、茨城県の介護老人保健施設マカベシルバートピア、大阪府の有限会社野花ヘルスプロモート)、お江戸共想法の参加者、理化学研究所の関係者、そして市民研究員の延べ38名が参加、知見の共有や討議を行いました。長引くコロナ禍の中でのオンライン開催もはや4回目となりましたので、時宜を得た鈴木晃市民研究員の司会により、お昼休みを含めた5時間のプログラムはスムーズに進行しました。

合同研修会参加者

それぞれの発表報告の概要を順にご紹介いたします。
【協働事業者 野花ヘルスプロモート 令和4年度野花共想法実施報告】 

野花ヘルスプロモート 正木慎三


 理化学研究所 革新知能統合研究センター 目的指向基盤技術研究グループ認知行動支援技術チームと有限会社 野花ヘルスプロモートと岸和田市とが協力し、「遠隔会話システムを用いた新しい社会参加とその認知機能向上効果に関わる実証研究」について共同研究を行うことになり、2023年2月14日に共同研究契約を締結したことは、先日当ブログにてご案内しましたが、それに至るまでのプロセスの詳細な説明がなされました。
 この研究は「遠隔会話システムを用いて、新しい社会参加とその認知機能向上効果に関わる実証研究」というテーマで共想法アプリの高齢者の効果を明らかにすること、及び地域での効果検証を通して遠隔ステムを用いた地域包括ケアシステムの中での新しい社会参加の可能性を模索する」ことを目的としたものです。


  2015年より、ほのぼの研究所と協働事業を行っている野花ヘルスプロモートはこれまで色々なシーンで共想法を実践してきましたが、昨年度、共想法を要支援認定を受けた方、また事業対象者を対象とした認知症発症予防サービス(日常生活支援総合事業)として実施できないかという発想を原点に、当該サービスに関する潜在ニーズ調査や大武先生との討議を重ねて計画を綿密に練り上げ、行政機関(岸和田市)への積極的な事業提案へと至りました。その後、岸和田市関係者のご理解と熱意溢れる多大なご尽力の結果、3者による共同研究契約締結に至るまでの正木さんの時系列の解説は大変印象深く、さらにこれまでの苦労とは別の意味での困難も予想される新事業へ意気込みも感じることができました。
  そして、最後には緊張感も漂ったと思える締結式の様子の報告と、岸和田市公民戦略連携デスクの 林氏、前田氏、浜崎氏と、この事業に関わる野花のスタッフの紹介がありました。
 事後のアンケートや総合討論でも、この自治体との密な連携を経ての新しい研究スタートの報告が大変印象深かったという声や、それを通して共想法がさらに拡まることへの期待感を感じることができました。

野花ヘルスプロモートの発表と、共同研究契約締結式の様子

【お江戸共想法報告2022年度】

お江戸共想法 山藤 千賀子

白鳥、睫遏渡邊、松木、井口、小谷、加藤、竹田夫妻


 2020年から開始、31回目を迎えたお江戸共想法の2022年度の報告は、コロナ禍移住先の軽井沢から参加し、そこでご夫婦で撮りため、昨夏に東京で開催された写真展で披露された傑作写真を添えてのページから始まりました。司会の山藤さんの、新規のお仲間が2名加わった等の実施状況の説明から、当日参加できた、まさに遠隔の移住先:軽井沢を含めた自宅からのメンバーと、理化学研究所に集合したメンバー10名全員が画面に登場して、一人30秒でコメントを述べる形で行われました。この1年間、共想法に参加してのそれぞれの過ごし方や見方の変化等の感想からは、お江戸共想法のモットー「楽しく参加する」を具現化しながら、活動に参加している様子が伝わるものでした。

移住した参加者が写真展で披露した傑作を表紙にあしらった報告


【協働事業者 マカべシルバートピアの活動報告】

マカベ―シルバートピア・市民研究員 永田映子


 2011年のスタートから11年、半年ごとのセッションの第19期を迎えた介護老人保健施設における通所者、入所者が参加なさる共想法やお話の会の実施者として、特に18期の実施を中心に説明がありました。新型コロナ感染者が施設で初めて短期入所者から数名発生、また自身も感染という過酷な経験をしながらも、タイムリー、かつきめ細かく応じて、参加方法の工夫、参加者対応を行い、予定通り、実践をこなしたという報告に、アンケートでも昨年同様感服させられたという声がありました。また、加齢に伴う実施者の健康管理の大切さも実感したことでした。
 実施者として、人生の楽しみ方が控えめで、他人の話に興味を示しにくく、自分のことを中心に話すなど、共想法参加を楽しみにくい人の認知機能が低下傾向であるようだと述べました。こうした認知機能の高さと楽しむ事との相関に関して、大武先生は楽しむ力は一種の能力や技術で、高めたり身に着けたりできるものであるものの、全ての人が歳を重ねることでそれらを会得するとは限らないので、共想法実施者は楽しませるプロであるべきであり、楽しめない様子の人がいれば、楽しめるよう助けたり、興味を持たせたり、楽しむためのヒントを提供するなどの工夫も必要だと述べられました。

マカベシルバートピア報告

【ほのぼの研究所継続コース】

市民研究員 根岸 勝壽・田口 良江

 
 はじめに、根岸市民研究員が「しなやかに生きる」という年間テーマで5月のアプリケーションバージョンアップ時を除く11回実施した、月度テーマと各メンバーの話題写真を紹介しました。また嬉しいことに、賛助会員様のご紹介やそのご親族、近畿圏からのご夫婦での参加、お江戸共想法からの転入など年度末には5名のお仲間が増えたことになり、従来の継続コース参加者と市民研究員と合わせて21名と、大勢での実施であることを述べました。また、2022年度から新規参加した方には基本のテーマで、これまでの経験者は年度テーマに基づいた月度テーマでと、同グループで新旧2つのテーマで行う方式を採用、さらに尋ねたかったことの確認や親睦を深めるために、隔月に各自が飲み物を用意して、フリートークを行う時間を設けるなど、嘗ての対面型共想法の良さも取り入れる等、新しい要素をも加えて共有する時間をふやしてきたことも加えました。
 次年度の大きな目標として、市民研究員は誰もがWI-FIやスマホ等の不測の事態にも対応できるような技術獲得のための実施者としての学習会や、参加者と共に共想法の学び直しの会を開催し、さらなる充実した共想法の実施、さらには、実施者が拡大した場合に備えることを大きな目標としました。また、新型コロナの感染状況を確認しながら、お江戸共想法の方々からのご提案もあったような、街歩き共想法(遠隔と対面のハイブリッドを含む)実施を計画していると述べました。

 次いで、田口市民研究員が、加齢や家庭・体調の都合でスマホを使っての遠隔共想法には参加できていない、数人のメンバーの心のフレイル化を防ぎ、近いうちに実現の可能性のあるハイブリッドな方式での共想法へのご参加に対応していただくためにもと、継続参加者の有志と共に、きめ細かく交流を絶やさないようにしている事例を報告しました。

継続コース報告

【ほのぼの研究所 講演会2022年度講演会実施報告・ブログ配信実施報告】

市民研究員 鈴木晃・長久秀子


 コロナ禍のため、恒例の年2回開催の講演会をオンライン開催へと転換しての3年目の実態や、時系列の事後アンケート結果や視聴申し込み状況等から得られた結果を発表しました。
 設立記念講演会の招待講師である東北大学の瀧靖之先生も、クリスマス講演会招待講演講師の慶應義塾大学の三村將先生も、その道の権威でいらっしゃいますが、どちらの先生も専門的なことを詳細にわかりやすく説かれ、超高齢社会には様々な課題はあるものの、それをネガティブに考えることなく、高齢者自らがポジティブに生きるための知見や術を提供して下さったため、勇気や意欲を喚起していただけたという評価を伝えました。
 また、事後アンケートでの総合評価は好評を維持し、視聴者獲得や呼び戻しは見られるも、年々グレードアップするオンライン企画ヘビーユーザーの質の高いニーズ対応と、「役立つ情報を提供している」という好評ポイントの向上のためには、臨場感の演出を含めた運営スキルアップと、そのための十分な準備期間の確保を課題として総括しました。

 併せて、毎週日曜日朝に配信している担当として、1年間の配信数内訳-研究所の活動報告やお知らせをする「ほの研日誌」(9件)、共想法の話題と写真を紹介する「今日の共想法」(43件)を報告。またさらに、共想法やほのぼの研究所についての周知向上のためには、現在メインとなっているほのぼの研究所以外の拠点での共想法の話題を掲載していきたいと、協力を要請しました。

オンライン講演会実施報告

【理化学研究所による実施支援】(含むきらりびとみやしろ)

理化学研究所 岩田幸子・きらりびとみやしろ・市民研究員 野口宗昭


 午後の部は理化学研究所の「共想法は楽しい!」をモットーに常に明るく、元気よく、そして何より根気よく支援を継続中の、テクニカルスタッフの岩田さんから以下の2022年度の活動報告と今後の計画について、頼もしく熱いメッセージをいただきました。
2022年度の活動
・ほのぼの研究所継続コースの見守りと研究会への参加
・第3月曜日きらりびと共想法/第3水曜日お江戸共想法の実施
・システム不具合から写真登録やほのバリューの入力など、全ての支援
・写真の著作権チェック
・新規参加者への導入から参加に至るまでの支援
・SIMや機材に関する設定や管理及び手配等
今後の計画
・勉強会開催
・新たに和光市グループを形成する
 最後に、きらりびとみやしろの市民研究員 野口さんが、理化学研究所のサポート受けながら、従来の対面型共想法の参加者が2022年2月から、遠隔共想法に参加を開始した旨を報告しました。

理研による実施支援報告

【2022年度まとめ・2023年度方針】

ほのぼの研究所 代表理事・所長 大武美保子


 まず、「認知症予防」という目的のために2020年度のコロナ1年目からどのように考え、実践をしてきたかということを各年度の目標とできたことを振り返りました。そして、2020年度に新しく考えた「目的に即した新しいやり方」:遠隔共想法を実践、2021年度にその「実践の輪を広げる」ことを経て、2022年度はその「実施者を育む」こと、具体的には以下を目標に据えて活動したことを報告しました。
1)遠隔共想法の参加者から実施者になる
2)連携先の遠隔共想法活用の支援を行う 
 果たして、2023年度から開始する岸和田市との共同研究実験のための実施者が選定されると共に、ほのぼの研究所では市民研究員が交代で遠隔共想法を実施する体制ができるという大きな成果を得て、さらに、遠隔共想法終了後にお茶の時間を取り入れたり、拠点以外の地域からやご紹介で新規に参加された方々と新旧混合のテーマで行うなど、新しいやり方も取り入れることもできた成果を発表しました。
 さらに5年ごとの共想法をシーズととらえて据えた各タームのテーマと、ほのぼの研究所の活動の5つの柱(実施・普及・連携・育成・研究)とをリンクさせて、活動の進捗状況を説明しました。
 そして、2022年度から始まった第4ターム(テーマ:「 試験農園を各地、各国に 農園(営利事業)の立ち上げを支援」)の2年目(コロナ禍4年目・(With/After))である2023年度の方針のテーマを「新しいやり方を作る」とした上で、以下のように具体的な活動案を示しました。

2023年度の方針

 なお、大武代表理事・所長は昨年8月に採択されたムーンショット型研究開発事業の目標3の分野において採択された「ありたい未来を共に考え行動を促すAIロボット」プロジェクトのプロジェクトマネジャーとしての研究にも参加しているため、その研究概要や今後の活動の関連性についても解説しました。

ムーンショットプロジェクトの研究イメージ

【2022年度の活動概要(外部連携)】

理化学研究所 小暮 純生


 小暮先生からは、理化学研究所とほのぼの研究所の2022年度の2大トピックスをはじめとする、様々な研究への支援、外部連携の報告がありました。まずコロナ禍の影響やさらなる研究に繋げるために、主要共同研究のうち2023年3月31日期限だった和光市との「高齢者の認知機能脆弱予知予防」研究と、飲料メーカーとの「お茶によるコミュニケーションが気分、QOLに与える影響」研究が、前者が2025年3月31日、後者が2024年3月31日までに延長された報告がありました。
 また先に報告のあった岸和田市と有限会社野花ヘルスプロモートと理化学研究所の認知行動支援術チームとの2025年3月31日までの共同研究契約締結までの経緯やその概要、役割分担などを説明され、野花ヘルスプロモートご担当の多大なご尽力に感謝の意を述べられました。
 また、研究支援として2021年度のSBIRフェーズ1の支援事業である「高齢者の認知機能訓練を目的とする対話ロボット技術開発に向けた対話データの解析」研究の終了後フォローアップ支援を挙げられました。

 そして最後に、2022年度の大きなトピックスの一つである、大武先生がプロジェクトマネジャーとして採択されたムーンショット型研究開発事業目標3の分野において採択された「ありたい未来を共に考え、行動を促すAIロボット」のプロジェクトについての構想策定をはじめとして多面的な連携サポートに携われたと述べられました。当該のプロジェクトは”自分の想いや考えを言葉にして気づきを得て、よりよく生きるための行動ができるよう促す、行動変容支援 ロボットを開発する。会話での言葉や様子から、多くの人の知恵や知識、体験を収集し、特定の人の気持 ち、考え、価値観にあった逸話や声掛けを通じ、新しい視点や方法を提示して、行動を促す技術を開発することにより、2050年には、「ありたい未来を共に考え、そのための行動を促す2025年までにAIロボット」の実現を目指す”ものだと解説をされました。

【ご参考】理研AIPニュース
ムーンショット型研究開発事業に採択されました「2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現」

【国立情報学研究所】

国立情報学研究所教授 宇野 毅明


 研修会最後の発表は、ムーンショット型研究開発事業の大武先生のプロジェクトでの共同研究者でもいらっしゃる、国立情報学研究所・総合研究大学院大学 宇野毅明教授にお願いいたしました。先生のご専門は情報学のアルゴリズムとデータマイニングで、最近は色々な分野の研究者が議論して、新しい考えを見つけ出す場を作って研究していらっしゃると自己紹介がありました。そしてご自身が携わられたデータマイニング分析で得られた、愛媛県の自治体IT婚活においてお見合いにおける受け率が上った理由として得られた、想定外の結果や、新型コロナウィルスのワクチンに関する、ツィッターのビッグデータから接種率が高まった理由の変遷などを、興味深い事例としてご紹介下さいました。

 ムーショット研究プロジェクトとの共通のテーマは、「世の中の課題を解決するために行動変容を起こさせるためにはどうしたらいいか」ということ。当該研究における基本となるツールである共想法による行動変容は、共想法に興味のない人をいかにして参加に導くかが課題のひとつでもあるも、(直近の実施者へのインタビューでは)共想法に参加する楽しさや意義を効果的に説明し、参加をいざなうための言葉を見出し切れていないのが課題ではないかと思われたとして、それらを追求して行動変容を導くための研究を引き続き進めていきたいと抱負を述べられました。共想法の実践・参加に携わる身として、活動の意味や意義を見直す契機にもなったことでした。

宇野先生の資料


 10分間のティーブレイクを挟んでの総合討論の時間は、多忙な業務時間を割いてご参加いただいた岸和田市の職員の方をはじめ、参加者全員が感想を述べ、質疑応答を交わしました。宇野先生の講話に続く形で、それぞれが魅力を実感しながらも、それを言葉でうまく表し、他の方々の参加お勧めにつながらせにくいとされる共想法について、実施者や参加者、そして新規の参加者やお勧めに成功した人と、それぞれの立場から、ネックになる要素やお勧めに効果的になるかもしれないヒントやキーワードを少し見出すことができました。また実施者からは、今後参加者が増えた場合の運営上の課題についても、積極的な提案も多く出されました。 
 また、2023年度から、SNSを通して共想法のアピール度向上に協力して下さる予定の強力なサポーターのご紹介もあり、心強く感じました。

 久しぶりに、またお初に、画面を通しての対面を果たし、様々な立ち位置を確認、理解すると共に、参加者それぞれが2023年度の課題や責務を念頭に、「新しいやり方」を追求する1年になることを共有することのできた研修となりました。

市民研究員 長久 秀子

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