ほの研ブログ - 2023年ほのぼの研究所クリスマス講演会
2023年12月5日(火)14時30分より、柏市文化・交流総合施設パレット柏のミーティングルームで、ほのぼの研究所クリスマス講演会を開催いたしました。本年8月のNPO法人設立15周年記念講演会に続き、会場とオンラインでのハイブリッド形式での開催で、柏市のフレイル予防ポイント事業としても承認されました。
諸般の事情でご案内から開催までの日数が短く、定員数が限られた会場での企画でしたが、短期間にオンラインご視聴お申込数は約50名、現地参加申込者24名となりました。
当日は冬らしい気温となり、お出かけへのご負担が案じられましたが、神奈川県、東京都、埼玉県、並びに地元東葛地域からご参集いただき、ほのぼの研究員、理化学研究所の関係者合わせて約40名が知見を共有いたしました。
2023年クリスマス講演会チラシ
今講演会は、「暮らしに取り入れる認知症予防」と題して、招待講演講師に国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センターセンター長 島田裕之先生をお迎えし、「招待講演」「基調講演」「両講師の対談」「交流会」の4部形式としました。
島田田裕之先生は、2019年の当所の設立記念講演会に引き続き、ありがたくも2回目のご登壇でした。その設立記念講演会でも、また、同年秋に開催したその講演会のビデオ鑑賞会においてさえも、視聴者の皆様が先生のご指導に合わせて、コグニサイズのトライアルで楽しく身体を動かし、会場いっぱいに笑顔が溢れたことが懐かしく思い出されました。
招待講演講師 島田裕之先生
超ご多忙なスケジュールの中、午前の会議を終えて急ぎ愛知県の国立長寿医療研究センターから駆けつけて下さいました先生からは、認知症予防のための活動を効果的に暮らしに取り入れる極意をご教示いただけるものと、大変楽しみにしたことでした。
大武美保子弊所代表理事・所長の開会挨拶に続き、おしゃれな先生には少々ご無理をお願いしたこともあり、開口一番、「初めてサンタ帽を着用して講演しますと」おっしゃり、「頑張らない認知症予防:コグニライフのススメ」の講話が始まりました。
島田先生は平成15年北里大学大学院博士課程を修了(リハビリテーション医学)。東京都老人総合研究所研究員、Prince of Wales Medical Research Institute(Sydney, Australia)客員研究員、日本学術振興会特別研究員、東京都健康長寿医療センター研究所を経て、現在は国立長寿医療研究センターに所属。信州大学医学部、同志社大学の客員教授を併任。専門領域はリハビリテーション医学、老年学。高齢者の健康増進に関する研究を行っており、第10回社団法人日本老年医学会優秀論文賞、Geriatrics and Gerontology International Best Article Awardなどを受賞されております。現在は、認知症予防や寝たきり予防を目指した高齢者の健康増進のための効果的なプログラムの作成と効果検証の実践の他、近年では、日本医療研究開発機構や厚生労働省の研究班の代表研究者を複数務め、平成24年度介護保険制度改正にともなう認知症予防プログラムの改訂、サルコペニアの定義に関する提言等に関与なさるなど、ご活躍中です。
招待講演演題
まず初めに、認知症に関するおさらいとして、グローバルな視点、研究・治験データを織り交ぜて以下のように説明をなさいました。
・認知症者の激増は、今後日本だけでなく、世界的な課題
4,700万人(2015年)→7,500万人(2030年)→1億3,000万人(2050年)
・一番発症率の多いアルツハイマー病は症状が出る20年前から病変は始まっている
・日本の軽度認知障害(MCI)有病者率は21%であるが、一生懸命予防に取り組むと25%の人が正常に戻ることもわかっている→予防の重要性
・最近日本で販売開始となった認知症抗体治療薬レカメマブは、認知機能低下の速度を27%抑制し、発症を7〜8カ月遅らせる効果が示されているが、完全な回復や進行の停止はまだ不可能
また予防戦略としては、中年期までは教育歴、中年期以降は生活習慣(高血圧・肥満・糖尿病・喫煙・運動不足などが発症の要因)が関連すると考えられ、それを抑制するために以下3つの柱がある。
’知症予備力(脳の体力)の向上
脳のダメージの減少
G召留蠑匹慮詐
さらに、WHOの認知症予防ガイドラインとして以下が提唱されていることを述べられ、具体的には【運動習慣を持つことが認知症予防の1丁目1番地】だと説かれました。
WHOの認知症予防ガイドライン
次いで、先生がご所属の国立長寿医療研究センターで考案なさった、単純な運動するだけでなく、頭を使いながら(例えば計算をするなど)運動をする「コグニサイズ」についての説明がありました。脳の前頭葉は、望ましい活動の選択・判断や長期記憶の保持に重要な役割を担っており、加齢に伴い低下しやすいところです。コグニサイズを行うと、前頭葉の活動が活性化するという検証結果があり、認知機能の改善に繋がると説かれました。ただし、認知症の発症を先送りできるかどうかの研究については、さらに研究が必要とされました。
そして、以上の講話で挙げられたように、認知症予防に関しては世界中で研究が重ねられるも、劇的な予防方法はまだ解明されていない。予防に関して一番大事ことは【やり続けること】であると述べられました。
なぜなら、認知機能維持・低下に効果的とされる活動や方法の周知や啓蒙をしても、最初のモチベーションの継続が無残にも打ち砕かれる→多くの人達が継続してやらないという事実が存在するからです。そして、その要因を「身体的または精神的要因」「対人的要因」「環境要因」とカテゴリー別に分類して挙げられました。そうした阻害要因の数々については、大変興味深く感じるとともに、これまでの自分たちの経験を振り返り、大いに納得したことでした。
最後に、継続を阻害しにくく、できるだけ無意識でも生活の中に取り入れることのできるものとして考案された「コグニライフ」のうち、買物行動の中でできる幾つかを、先生ご出演の動画資料を使いながら、紹介して下さいました。
,舛腓ぢしウォーキング
買物はなるべく歩いて行き、歩く時には足を5センチ前に出し、膝を挙げるのではなく、後ろ足を大きくけるように、歩幅と一緒に背筋柄を伸ばした姿勢で歩く。
脳デュアルタスクの一筆書きショッピング
メニューで使う食材を記憶しておいて、スーパ―の同じ通路を通らないように一筆書きで、買い廻る方法
なるべく店入口から遠いところに駐車したり、・店内のエレベーターやエスカレーターを使わずに、身体に負荷をかける
コグニライフ買物編
さらに、国立長寿医療研究センターでは、モチベーションを高め、維持するための工夫を凝らしたアプリや場が沢山用意され、実験が続けられている旨のご紹介がありました。
そして、最後に認知症予防活動というのは、基本的には誰かがやってくれることではなく【自分でやること=やる気にならなければ始まらない。やる気スイッチはそれぞれ異なるので、様々を試してみて、自分の琴線に響く=自分の価値観に合ったものを見つけて実践するのが長続きの秘訣】だと、講話を締めくくられました。
次ぐ基調講演「最近のことを話そう」では、大武美保子代表理事・所長が最近の事を話すことが、なぜ認知症予防にいいのかということについて述べました。
基調講演演題
(1) 最近の話をすることは、なぜ認知症予防によいのか
世の中で高齢者は最近の話よりも昔の話をする傾向が見られることは、人生経験の長さが関係するも、以下の記憶のプロセス上での機能の低下がもたらすものだと述べました。
すなわち、記憶というのは以下の3つのプロセスをきちんと踏んだ時に成立します。
【覚えること】(記銘)…体験したことを頭に刻み込む、覚えること
【覚えておくことと】(保持)…体験したことを覚えておくこと
【思い出すこと】(想起)…思いだすこと
最近の話をする時には=´↓がきちんとできていると言える。
昔の話をする時には=↓ができていると言える。,論里任ていたが、今できるかどうかはわからない。
最近の話をしなくなった=最近のことについて´↓のいずれかができない可能性があることを意味する。昔の話ができるのであれば、↓はできているので、,できなくなっている可能性が高い。この機能は認知症になると最初に低下する機能でもある。
最近の話をしない時に、最近の話をしようとしないだけでしようとすればできるのか、しようとしてもできなくなっているのかは、話してみることを通じて確かめることができます。
脳には可塑性があるため、最近の話をしていないと感じたら、衰えやすい認知機能を底上げするべく、「最近の話をする」ように心がけるとよい、説きました。
最近のことを話せる時、話せない時の記憶のプロセス
(2)共想法は最近のことを話すのにふさわしい手法
認知症予防のための会話支援手法として考案した共想法は、予め設定されたテーマに沿って撮影した写真を持ち寄り、時間と順番を決めて、話し手はそれぞれ、映し出された写真を時間内に話し、その後他の参加者からの質問などに答え自分の体験をより深く考える手法で、一連の作業を通して、「体験記憶」「注意分割機能」、「計画力」等を総合的に使い、歳を重ねると誰でも起こり得る認知機能低下を遅らせ、長持ちする脳の使い方を実践するものと説明しました。そして「最近のことを話す」のに効果的なお勧めのテーマとしては「10分歩いてみつけたもの」だとのアドバイスがありました。
また理化学研究所での研究で「共想法をした人」と「雑談をした人」との比較実験に於いて、記憶機能の高い人は最近の話をする傾向が強く、さらに過去に得た体験や知識を織り交ぜて話すなど、記憶機能をふんだんに使っていることが検証されたことを紹介しました。最近のことを具体的に話すために、その周辺情報などを収集したり、スマホや写真に記録することを習慣化することは、最近の話をするために役立つことだと述べました。
(3)共想法は会話支援手法から会話訓練法へ
これまで共想法は、認知機能を活用する会話のやり方を助けるという意味で、共想法を会話「支援」手法と呼んでいました。共想法は「最近の話をする」ことは勿論、さらに「よく聴く」「聴いたことを憶えておいて、それに質問する」という認知機能低下を抑えるために、難易度の高いプロセスを擁しています。これからは、共想法に参加している時に、認知機能を活用するだけでなく、認知機能を活用する会話のやり方を、日常生活における会話において習慣化させるための、会話「訓練」法としていきたいと、抱負を述べました。
(4)共想法に参加するには
現在、共想法への参加はコロナ禍で集合が叶わなくなったため、オリジナル開発のアプリを搭載したスマホやタブレットを使って、全国どこからでも参加できる遠隔共想法をメインに実践しています。今後は、遠隔でも勿論参加できるが、ある場所に何名か集まれば、そこで遠隔参加者と共に現地で共想法に参加できるような、ハイブリッドなやり方を考えているとし、2023年度内の開催予定を案内しました(2024年1月9日と、3月6日・於ラコルタ柏)。また、2023年11月に再開した、街歩きと対面の共想法のコラボである「街歩き共想法」も恒例行事と展開していきたいとして、参加をご案内し、終話しました。
休憩を挟んでの対談では、両講師が「年末年始こそ、認知症予防」と題して、昨今は世代や家族構成による年末年始への意識や行動の変化は見られるものの、家族や友人たちが集まる機会が多く、一年を振り返り、新しい一年の計画を立てる頃でもあるため、この時ならではの認知症予防に効果のある過ごし方ついて意見を交わしました
。
対談
まずは、この1年の記憶を整理し、それに基づいて次の1年の計画を立てるなど、まさに最近のことを思い出し、話すことで認知機能を活用するチャンスでもあると位置づけられました。さらに、好ましい食生活として、DHAやEPAを含むゴマメや、ポリフェノールを含む黒豆等、積極的に摂るべき食材を使った多様なおせち料理の数々を少しずつ食することが挙げられました。また、カルタ、百人一首、花札、トランプなどのカードゲームで記憶力を活用し、社寺等の階段の昇降で筋肉に負荷をかけ、遠回りしての初詣で有酸素運動するなど、年末年始には、頑張らなくてもできるコグニライフにつながる伝統の生活習慣が多々あることを再確認、来るべき年末年始には、改めてこうしたことを意識しながら過ごそうと思ったことでした。
事後のアンケート調査では2度目のハイブリッドで開催にも関わらず、画面、音声、運営等の課題へのご意見をいただき、次回の反省材料になりました。比較的狭い会場での開催が案じられましたが、身近で講師の先生の講話が聴けたのがよかったというお声や、生活の中に気負いなく取り入れる認知症予防の情報が得られたので、早速取り入れたいというご意見をいただき、休心したことでした。
ご参加の皆様
講演会終了後の多目的スペースでの交流会には、講演会に引き続きご参加いただいた方が多く、嬉しいことでした。大武所長の挨拶の後、記念写真を撮り、共同研究先の伊藤園様の多種のペットボトル飲料のうち、お好みのものお選びいただいて、乾杯。次いで全員が、時間を決めて自己紹介をし、その後は、講師の先生や久方ぶり、あるいは初めての御目文字同士が歓談し、17時過ぎに「どうぞ良いお年を」と挨拶を交わし、お名残り惜しく散会しました。
記念撮影
歓談の様子1
歓談の様子2
最後になりましたが、今講演会・交流会開催に当たり、様々なサポートをしていただきましたパレット柏や柏市高齢化支援課のご担当の方々、また国立長寿医療研究センターの方々、並びにご参加、ご尽力いただきましたすべての皆様に深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
諸般の事情でご案内から開催までの日数が短く、定員数が限られた会場での企画でしたが、短期間にオンラインご視聴お申込数は約50名、現地参加申込者24名となりました。
当日は冬らしい気温となり、お出かけへのご負担が案じられましたが、神奈川県、東京都、埼玉県、並びに地元東葛地域からご参集いただき、ほのぼの研究員、理化学研究所の関係者合わせて約40名が知見を共有いたしました。
2023年クリスマス講演会チラシ
今講演会は、「暮らしに取り入れる認知症予防」と題して、招待講演講師に国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センターセンター長 島田裕之先生をお迎えし、「招待講演」「基調講演」「両講師の対談」「交流会」の4部形式としました。
島田田裕之先生は、2019年の当所の設立記念講演会に引き続き、ありがたくも2回目のご登壇でした。その設立記念講演会でも、また、同年秋に開催したその講演会のビデオ鑑賞会においてさえも、視聴者の皆様が先生のご指導に合わせて、コグニサイズのトライアルで楽しく身体を動かし、会場いっぱいに笑顔が溢れたことが懐かしく思い出されました。
招待講演講師 島田裕之先生
超ご多忙なスケジュールの中、午前の会議を終えて急ぎ愛知県の国立長寿医療研究センターから駆けつけて下さいました先生からは、認知症予防のための活動を効果的に暮らしに取り入れる極意をご教示いただけるものと、大変楽しみにしたことでした。
大武美保子弊所代表理事・所長の開会挨拶に続き、おしゃれな先生には少々ご無理をお願いしたこともあり、開口一番、「初めてサンタ帽を着用して講演しますと」おっしゃり、「頑張らない認知症予防:コグニライフのススメ」の講話が始まりました。
島田先生は平成15年北里大学大学院博士課程を修了(リハビリテーション医学)。東京都老人総合研究所研究員、Prince of Wales Medical Research Institute(Sydney, Australia)客員研究員、日本学術振興会特別研究員、東京都健康長寿医療センター研究所を経て、現在は国立長寿医療研究センターに所属。信州大学医学部、同志社大学の客員教授を併任。専門領域はリハビリテーション医学、老年学。高齢者の健康増進に関する研究を行っており、第10回社団法人日本老年医学会優秀論文賞、Geriatrics and Gerontology International Best Article Awardなどを受賞されております。現在は、認知症予防や寝たきり予防を目指した高齢者の健康増進のための効果的なプログラムの作成と効果検証の実践の他、近年では、日本医療研究開発機構や厚生労働省の研究班の代表研究者を複数務め、平成24年度介護保険制度改正にともなう認知症予防プログラムの改訂、サルコペニアの定義に関する提言等に関与なさるなど、ご活躍中です。
招待講演演題
まず初めに、認知症に関するおさらいとして、グローバルな視点、研究・治験データを織り交ぜて以下のように説明をなさいました。
・認知症者の激増は、今後日本だけでなく、世界的な課題
4,700万人(2015年)→7,500万人(2030年)→1億3,000万人(2050年)
・一番発症率の多いアルツハイマー病は症状が出る20年前から病変は始まっている
・日本の軽度認知障害(MCI)有病者率は21%であるが、一生懸命予防に取り組むと25%の人が正常に戻ることもわかっている→予防の重要性
・最近日本で販売開始となった認知症抗体治療薬レカメマブは、認知機能低下の速度を27%抑制し、発症を7〜8カ月遅らせる効果が示されているが、完全な回復や進行の停止はまだ不可能
また予防戦略としては、中年期までは教育歴、中年期以降は生活習慣(高血圧・肥満・糖尿病・喫煙・運動不足などが発症の要因)が関連すると考えられ、それを抑制するために以下3つの柱がある。
’知症予備力(脳の体力)の向上
脳のダメージの減少
G召留蠑匹慮詐
さらに、WHOの認知症予防ガイドラインとして以下が提唱されていることを述べられ、具体的には【運動習慣を持つことが認知症予防の1丁目1番地】だと説かれました。
WHOの認知症予防ガイドライン
次いで、先生がご所属の国立長寿医療研究センターで考案なさった、単純な運動するだけでなく、頭を使いながら(例えば計算をするなど)運動をする「コグニサイズ」についての説明がありました。脳の前頭葉は、望ましい活動の選択・判断や長期記憶の保持に重要な役割を担っており、加齢に伴い低下しやすいところです。コグニサイズを行うと、前頭葉の活動が活性化するという検証結果があり、認知機能の改善に繋がると説かれました。ただし、認知症の発症を先送りできるかどうかの研究については、さらに研究が必要とされました。
そして、以上の講話で挙げられたように、認知症予防に関しては世界中で研究が重ねられるも、劇的な予防方法はまだ解明されていない。予防に関して一番大事ことは【やり続けること】であると述べられました。
なぜなら、認知機能維持・低下に効果的とされる活動や方法の周知や啓蒙をしても、最初のモチベーションの継続が無残にも打ち砕かれる→多くの人達が継続してやらないという事実が存在するからです。そして、その要因を「身体的または精神的要因」「対人的要因」「環境要因」とカテゴリー別に分類して挙げられました。そうした阻害要因の数々については、大変興味深く感じるとともに、これまでの自分たちの経験を振り返り、大いに納得したことでした。
最後に、継続を阻害しにくく、できるだけ無意識でも生活の中に取り入れることのできるものとして考案された「コグニライフ」のうち、買物行動の中でできる幾つかを、先生ご出演の動画資料を使いながら、紹介して下さいました。
,舛腓ぢしウォーキング
買物はなるべく歩いて行き、歩く時には足を5センチ前に出し、膝を挙げるのではなく、後ろ足を大きくけるように、歩幅と一緒に背筋柄を伸ばした姿勢で歩く。
脳デュアルタスクの一筆書きショッピング
メニューで使う食材を記憶しておいて、スーパ―の同じ通路を通らないように一筆書きで、買い廻る方法
なるべく店入口から遠いところに駐車したり、・店内のエレベーターやエスカレーターを使わずに、身体に負荷をかける
コグニライフ買物編
さらに、国立長寿医療研究センターでは、モチベーションを高め、維持するための工夫を凝らしたアプリや場が沢山用意され、実験が続けられている旨のご紹介がありました。
そして、最後に認知症予防活動というのは、基本的には誰かがやってくれることではなく【自分でやること=やる気にならなければ始まらない。やる気スイッチはそれぞれ異なるので、様々を試してみて、自分の琴線に響く=自分の価値観に合ったものを見つけて実践するのが長続きの秘訣】だと、講話を締めくくられました。
次ぐ基調講演「最近のことを話そう」では、大武美保子代表理事・所長が最近の事を話すことが、なぜ認知症予防にいいのかということについて述べました。
基調講演演題
(1) 最近の話をすることは、なぜ認知症予防によいのか
世の中で高齢者は最近の話よりも昔の話をする傾向が見られることは、人生経験の長さが関係するも、以下の記憶のプロセス上での機能の低下がもたらすものだと述べました。
すなわち、記憶というのは以下の3つのプロセスをきちんと踏んだ時に成立します。
【覚えること】(記銘)…体験したことを頭に刻み込む、覚えること
【覚えておくことと】(保持)…体験したことを覚えておくこと
【思い出すこと】(想起)…思いだすこと
最近の話をする時には=´↓がきちんとできていると言える。
昔の話をする時には=↓ができていると言える。,論里任ていたが、今できるかどうかはわからない。
最近の話をしなくなった=最近のことについて´↓のいずれかができない可能性があることを意味する。昔の話ができるのであれば、↓はできているので、,できなくなっている可能性が高い。この機能は認知症になると最初に低下する機能でもある。
最近の話をしない時に、最近の話をしようとしないだけでしようとすればできるのか、しようとしてもできなくなっているのかは、話してみることを通じて確かめることができます。
脳には可塑性があるため、最近の話をしていないと感じたら、衰えやすい認知機能を底上げするべく、「最近の話をする」ように心がけるとよい、説きました。
最近のことを話せる時、話せない時の記憶のプロセス
(2)共想法は最近のことを話すのにふさわしい手法
認知症予防のための会話支援手法として考案した共想法は、予め設定されたテーマに沿って撮影した写真を持ち寄り、時間と順番を決めて、話し手はそれぞれ、映し出された写真を時間内に話し、その後他の参加者からの質問などに答え自分の体験をより深く考える手法で、一連の作業を通して、「体験記憶」「注意分割機能」、「計画力」等を総合的に使い、歳を重ねると誰でも起こり得る認知機能低下を遅らせ、長持ちする脳の使い方を実践するものと説明しました。そして「最近のことを話す」のに効果的なお勧めのテーマとしては「10分歩いてみつけたもの」だとのアドバイスがありました。
また理化学研究所での研究で「共想法をした人」と「雑談をした人」との比較実験に於いて、記憶機能の高い人は最近の話をする傾向が強く、さらに過去に得た体験や知識を織り交ぜて話すなど、記憶機能をふんだんに使っていることが検証されたことを紹介しました。最近のことを具体的に話すために、その周辺情報などを収集したり、スマホや写真に記録することを習慣化することは、最近の話をするために役立つことだと述べました。
(3)共想法は会話支援手法から会話訓練法へ
これまで共想法は、認知機能を活用する会話のやり方を助けるという意味で、共想法を会話「支援」手法と呼んでいました。共想法は「最近の話をする」ことは勿論、さらに「よく聴く」「聴いたことを憶えておいて、それに質問する」という認知機能低下を抑えるために、難易度の高いプロセスを擁しています。これからは、共想法に参加している時に、認知機能を活用するだけでなく、認知機能を活用する会話のやり方を、日常生活における会話において習慣化させるための、会話「訓練」法としていきたいと、抱負を述べました。
(4)共想法に参加するには
現在、共想法への参加はコロナ禍で集合が叶わなくなったため、オリジナル開発のアプリを搭載したスマホやタブレットを使って、全国どこからでも参加できる遠隔共想法をメインに実践しています。今後は、遠隔でも勿論参加できるが、ある場所に何名か集まれば、そこで遠隔参加者と共に現地で共想法に参加できるような、ハイブリッドなやり方を考えているとし、2023年度内の開催予定を案内しました(2024年1月9日と、3月6日・於ラコルタ柏)。また、2023年11月に再開した、街歩きと対面の共想法のコラボである「街歩き共想法」も恒例行事と展開していきたいとして、参加をご案内し、終話しました。
休憩を挟んでの対談では、両講師が「年末年始こそ、認知症予防」と題して、昨今は世代や家族構成による年末年始への意識や行動の変化は見られるものの、家族や友人たちが集まる機会が多く、一年を振り返り、新しい一年の計画を立てる頃でもあるため、この時ならではの認知症予防に効果のある過ごし方ついて意見を交わしました
。
対談
まずは、この1年の記憶を整理し、それに基づいて次の1年の計画を立てるなど、まさに最近のことを思い出し、話すことで認知機能を活用するチャンスでもあると位置づけられました。さらに、好ましい食生活として、DHAやEPAを含むゴマメや、ポリフェノールを含む黒豆等、積極的に摂るべき食材を使った多様なおせち料理の数々を少しずつ食することが挙げられました。また、カルタ、百人一首、花札、トランプなどのカードゲームで記憶力を活用し、社寺等の階段の昇降で筋肉に負荷をかけ、遠回りしての初詣で有酸素運動するなど、年末年始には、頑張らなくてもできるコグニライフにつながる伝統の生活習慣が多々あることを再確認、来るべき年末年始には、改めてこうしたことを意識しながら過ごそうと思ったことでした。
事後のアンケート調査では2度目のハイブリッドで開催にも関わらず、画面、音声、運営等の課題へのご意見をいただき、次回の反省材料になりました。比較的狭い会場での開催が案じられましたが、身近で講師の先生の講話が聴けたのがよかったというお声や、生活の中に気負いなく取り入れる認知症予防の情報が得られたので、早速取り入れたいというご意見をいただき、休心したことでした。
ご参加の皆様
講演会終了後の多目的スペースでの交流会には、講演会に引き続きご参加いただいた方が多く、嬉しいことでした。大武所長の挨拶の後、記念写真を撮り、共同研究先の伊藤園様の多種のペットボトル飲料のうち、お好みのものお選びいただいて、乾杯。次いで全員が、時間を決めて自己紹介をし、その後は、講師の先生や久方ぶり、あるいは初めての御目文字同士が歓談し、17時過ぎに「どうぞ良いお年を」と挨拶を交わし、お名残り惜しく散会しました。
記念撮影
歓談の様子1
歓談の様子2
最後になりましたが、今講演会・交流会開催に当たり、様々なサポートをしていただきましたパレット柏や柏市高齢化支援課のご担当の方々、また国立長寿医療研究センターの方々、並びにご参加、ご尽力いただきましたすべての皆様に深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
市民研究員 鈴木晃・長久秀子