ほの研ブログ - 新年のご挨拶2025
三浦半島 馬の背洞門
あけましておめでとうございます
旧年は、認知症予防を当事者の視点で研究するNPO法人ほのぼの研究所にとって、大きな飛躍に向けた一歩を踏み出す年となりました。
9月に、市民研究員3名と所長1名の計4名が、第13回日本認知症予防学会学術集会に参加発表しました。その中で、市民研究員による発表「高齢者の認知機能低下を防ぐために当事者の声を反映して開発した認知症予防会話手法共想法の遠隔アプリ」が、優秀な発表に対して贈られる「浦上賞」を受賞しました。ほのぼの研究所における当事者研究が、学術的にお認め頂けたことを嬉しく思います。10月には、当研究所所長である私が、「認知的健康につながるコミュニケーション支援技術の開発」の研究により、第23回ドコモ・モバイル・サイエンス賞 社会科学部門 選考委員特別賞を受賞しました。認知的健康のための基盤技術である会話支援手法「共想法」は、2006年10月に考案してから、18年になります。この間の活動を支えて下さっている皆様に、心より感謝申し上げます。
認知症予防の当事者は、高齢者だけでなく、その前の、40〜50代を中心とする全世代であることから、40〜50代の方に、市民研究員として当研究所の運営にご参加頂き、多世代で運営する体制を構築しました。12月には、40〜50代を中心とする多世代に向けた書籍「脳が長持ちする会話」を出版しました。幅広い世代に、自分事として興味を持っていただけるよう、認知症予防を「脳が長持ち」と言い換える工夫をしました。ビジネス書、実用書の位置づけで、ビジネスパーソンや高齢者が、仕事や日常の会話で使えるノウハウをまとめました。2025年の40〜50代が、2050年に60〜80代になった時に、脳が長持ちしている人が大半を占める社会を実現して参りたいと思います。
8月には、『老いの失敗学』を出版された、畑村洋太郎先生をお迎えし、「創造的に老いる」をテーマに、設立記念講演会を開催しました。老いの当事者である畑村先生に配慮して、対談を事前収録した上で、当日、対談動画を一緒に見ながら会場でさらに対談をしました。当事者の視点での研究が重要という畑村先生の考え方は、当事者研究拠点であるほのぼの研究所の基礎となるもので、その原点を確かめることができました。12月には、書籍『脳が長持ちする会話』出版を記念するクリスマス講演会を開催し、書籍の内容を紹介する基調講演と、共想法実演を交えた対談をしました。
コロナ禍によりストップしていた出前講座が復活したことは、特記すべきことです。千葉県生涯大学校卒業生が、自主的に運営している生涯学習サークル「柏シルバー大学院」から、出講の依頼がありました。5月にC組、7月にB組を対象に、それぞれ約100名ずつの方にご参加頂き、会話による認知症予防についてお伝えしました。東京都西東京市から、認知症予防事業「脳とからだの健康教室」への出講依頼があり、食事や運動など、認知症予防について学ぶ全7回で構成される講座の1回を、合計3クール担当することとなりました。10月に第1クール、12月に第2クールを開催、今年2月に第3クールが開催される予定です。
初めての方に共想法を体験頂くために、「今から始める認知症予防」と題する体験講座を、柏市教育福祉会館「ラコルタ柏」にて、1月、3月、7月に対面で開催しました。また、街歩きと共想法を組み合わせた街歩き共想法を、10月に千葉県我孫子市で開催しました。この他、理化学研究所が主催、当研究所は研究協力という形で、6月に大阪府岸和田市、7月に長野県軽井沢町で、街歩き共想法を開催しました。体験講座、街歩き共想法参加者の中から、共想法継続コースへの継続参加ご希望の方が現れました。
新年は、千葉県の生涯学習、芸術文化センターである、さわやかちば県民プラザ主催「ちばアカデミア講座」への出前講座から始まります。新年は、運営の多世代化と共に多世代を対象とする体験イベントにも挑戦し、引き続き、新たな仲間を見つけるための活動、仕組みづくりに取り組んで参りたいと思います。2025年を「長持ち脳会話」元年として参ります。本年もご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2025年元旦
NPO法人ほのぼの研究所代表理事・所長
理化学研究所 チームリーダー 大武 美保子