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ほの研ブログ - 創発夏の学校 人との創発:創造的な会話を支援する

創発夏の学校 人との創発:創造的な会話を支援する

カテゴリ : 
ほの研日誌
執筆 : 
TasakiT 2014-9-21 8:00
長野県茅野市にある諏訪東京理科大学において夏の学校形式で開催された、第20回創発システムシンポジウム、略して、創発夏の学校において、ほのぼの研究所代表理事・所長の大武美保子が、ワークショップの講師を務めましたので報告します。

創発夏の学校は、2014年8月31日から9月2日まで、2泊3日の合宿形式で開催され、全国の研究者、学生約60名が参加しました。主催は、計測自動制御学会 システム情報部門で、「創発システム」をテーマに、最新の情報共有と学際的な交流を行いました。

一日目は基調講演とポスター講演、夜はバーベキューに、ナイトセッションです。二日目は、午前がチュートリアル講演で、ワークショップの背景となる研究について、各ワークショップの講師が紹介しました。午後は4つのワークショップが同時並行で開催されました。三日目は、各ワークショップの参加者による成果発表と表彰式、最後に記念撮影をしました。


参加者記念撮影(創発夏の学校ウェブサイトより許可を得て転載)


「創発現象」とは、生命活動や社会現象のように、部分の性質の単純な総和にとどまらない新たな特性が、全体として現れる現象を指します。ワークショップは、以下の四つで構成されました。

WS1 言語はいかにして生まれ変容するか? 石川将人
WS2 人との創発:創造的な会話を支援する 大武美保子
WS3 生命現象理解のための生体機械融合システム 峯岸 諒
WS4 アイディアを形にするデジタルファブリケーションの実践 市川純章

当研究所代表理事が担当したワークショップ2(WS2)「人との創発:創造的な会話を支援する」に関するチュートリアル講演では、会話と創発現象の関係について、次のように述べました。会話による人と人との相互作用は、典型的な創発現象となりえます。たとえば、複数の人が考えを持ち寄って話し合うと、それぞれの考えの単純な足し合わせを超えた、一人では考え付かない新しい考えが生み出される可能性があります。この他、落ち込んでいた人が笑いの多い会話に参加することで元気が出たり、新しい考えに触れて、お互いに今まで気づかなかったことに気づけるようになったりすることもあります。


チュートリアル講演


続くワークショップでは、人と人との会話を支援するシステムを体験し、人と対話するシステムのシナリオを、グループワーク形式で作りました。その上で、創造的な会話を支援するシステムについて考察し、試作しました。ワークショップには、一般参加者9名の他、千葉大学大武研究室から、チューターとして4名の学生と研究員が参加し、ワークショップを共に進行しました。


人と対話するシステムのシナリオを作る参加者


一グループ2人から3人に分かれ、それぞれのグループが人間とロボットの掛け合う、独自のシナリオを作成しました。音声認識に基づいて、人間の発言に対し、ロボットが発言を返します。その時の身振り手振りも併せて振り付けました。翌朝の発表に向け、セミナーハウスでは、参加者が深夜まで、シナリオを作り込みました。

三日目の午前中の成果発表では、WS1からWS4まで、ワークショップ毎に30分が与えられました。WS2では、グループ毎にロボットを実際に動かしながら、シナリオの狙いについて説明しました。


ワークショップの成果発表、右側に浴衣を来たロボット


「もしも上司がロボットだったら」という設定で行われた、人とロボットとの掛け合いのシナリオをご紹介します。

部下「失礼します」
ロボット「どうぞー」(首だけ動かす)
部下「部長、言われていた書類を持ってきました」
ロボット「おお、早かったな。」
  「お前がここに来て2ヶ月経つが、最近、仕事はどうだ?」
部下「そうですね…だいぶ慣れましたが、最近は◯◯先輩がすごく厳しくて死にそうです」
ロボット「そうか…大変だな。人事部長である私からすこし話をしておく。あいつ人間味が無いもんなぁ。」
部下「ありがとうございます。あ、あともうひとつ…」
ロボット「なんだね」
部下「先月の麻雀の時に貸した3万、返して頂けm…」
ロボット「おかけになった電話番号は、現在使われておりません。おかけになった電話番号は…」(脱力)

予想との「ギャップ」が面白さにつながるのではと考え、シナリオを作ったそうです。間の取り方が大切と考え、特に笑いどころでは、聴衆の反応次第で進めるタイミングが変わるため、その部分は人が主導権を持つよう、工夫したとのことです。

人の輪の中にロボットが入り、人と人との創造的な関わりを助ける近未来を、垣間見ることができるワークショップでした。シナリオは、たまたま同じグループになった参加者同士の話し合いにより生まれた、まさに創発現象によりできたものです。人が集まる場では、創造的な関わりを生み出す環境を整え、一人だけでは思いつかない新しい考えを生み出せるように意識するとよいと、講評しました。

創発は、所与の条件に基づく予測や計画、意図を超えたイノベーションが誘発されるところから、組織論やナレッジマネジメントの分野では、個々人の能力や発想を組み合わせて創造的な成果に結びつける取り組みとして注目を集めています(人事労務用語辞典より)。

ほのぼの研究所においても、共想法の実践の中で、また、共想法を実践する準備や取りまとめの中で、日々創造的な会話が生み出されています。一人では思いつかなかったり、思い出せなかったりする言葉を、周囲との会話の中で自然に使うことが、会話に参加する一人一人の記憶機能、認知機能を訓練する鍵を握ると考えられます。双方向の会話により、人と人との創発が可能となる場を、確実に生み出す手法や技術を、明らかにしていきたいと思います。

代表理事・所長 大武美保子

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