ほの研ブログ - 新年のご挨拶2021
2021年 丑年 北海道の牧場にて
あけましておめでとうございます
旧年は、感染症流行により、世界中が翻弄された年でした。ほのぼの研究所では、集まって会話をするという、日常の当たり前の営みを丁寧に行うことが、認知症予防につながるという考えから、会話支援手法、共想法の研究開発と普及に取り組んできました。ところが、集まって会話をすることが、感染予防の観点で、危険な行為となってしまいました。この状況は、しばらく続くことが当初より予想できましたので、活動をオンライン中心に切り替え、ますますニーズが高まった認知症予防を、感染症流行下において実施する方法について、実践を通じて研究しました。以下、2020年の主な取り組みについてご紹介します。
第一に、月1回定期的に集まって開催していた、共想法継続コースを、在宅、オンラインの、遠隔共想法に順次切り替えました。これは、感染症拡大以前より開発していた、在宅で会話ができる遠隔会話支援システムを活用するものです。スマートフォンおよびタブレットアプリケーション上に、順に映し出される、参加者が撮影した写真を見ながら、順に会話します。端末に慣れている方から順に導入し、電話などを活用しながら、まずは、実施者同士、次に、実施者と参加者の一対一、実施者に2名、3名の参加者と、ステップを踏んで実施しました。必要な方には、感染予防対策を施した上で、定期開催していた会場に1名ずつお越し頂き、遠隔の実施者と、会場にいる実施者と、参加者とでグループ会話をする、新システムを体験頂き、自宅でできるように練習をしました。
第二に、ウェブシステムを導入し、週1回定期的に集まって開催していた、研究会を、ウェブ会議システムを用いた月1回の研究会に切り替えました。具体的には、感染症流行下で普及が進み、高齢者にとっても比較的使いやすい、zoomを導入しました。1人ずつ練習を重ね、一対一で接続できるようになった後、実施者が一堂に会することができるようになり、各種活動の準備と振り返り、議論することができました。また、年1回開催していた、各地の協働事業者や関係者が一堂に会する合同研修を、同様にウェブ会議システムを用いて実施しました。遠方の参加者からは、移動時間がない分参加しやすいと好評でした。
第三に、2016年より毎年実施協力してきた、柏市主催の認知症予防講座を、感染状況が比較的落ち着いていた秋に、柏市介護予防センターを会場として、オンラインとオンサイトのハイブリッド形式で開催しました。会場から遠くに住む講師と実施者の一部は、ウェブ会議システムから参加、講義を行いました。会場の近くに住む実施者は、会場にいて、共想法を実演し、参加者による体験を支援しました。テーマは「いまこそおうちで認知症予防」とし、在宅で会話ができる遠隔会話支援システムの体験を通じて、認知症予防について学ぶプログラムとしました。
第四に、研究所設立当初より、年2回ペースで開催してきた講演会を、オンラインで開催しました。夏の設立記念講演会は、「今こそ、実践!真の健康づくり」をテーマとし、疲労の研究の第一人者である渡辺恭良先生に神戸からご講演頂きました。冬のクリスマス講演会は、「コロナ禍での認知症予防」をテーマとし、認知症予防の実践研究の第一人者である西野憲史先生に、北九州からご講演頂きました。その後、講演の動画をYouTubeに掲載し、より幅広く多くの方に視聴いただけるようにしました。これに伴い、「NPO法人ほのぼの研究所」というチャンネルを開設しました。2021年年始において、2回の講演会について、それぞれ、招待講演、基調講演、招待講演者と基調講演者による対談の3本ずつ、合計6本の動画を掲載しています。
年初には考えてもいなかった新しいことに、結果として挑戦する1年となりました。いずれの活動も、防ぎうる認知症にならない社会の実現を目指す同志である関係の皆様のご協力、ご支援により実現したものです。困難を共に乗り越える仲間がいることを心強く思います。改めて感謝申し上げます。
活動のオンライン化により、地理的な制約が少なくなったことから、会話による認知症予防研究に、関心があるより多くの方に参加いただくことが可能な状況になったと言えます。2021年も引き続き、2020年に始めた新たな活動を継続しつつ、より効果的な活動方法を、実践を通じて探索し、活動の輪を広げて参りたいと思います。本年もご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2021年元旦
NPO法人ほのぼの研究所代表理事・所長
理化学研究所 チームリーダー 大武 美保子