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ほの研ブログ - ほの研日誌カテゴリのエントリ

 2023年3月14日10時より、ほのぼの研究所恒例の2022年度同合同研修をオンラインにて開催いたしました。開会の挨拶で大武代表理事・所長が共想法を基点に認知症にならない方法について共に考え行動するために設立した当法人の存在意義を確認するともに、1年間得られた知見を持ち寄り、持ち帰り、次の1年につなげる 参考にするために行うという開催目的と意義を述べました。
 また、改めて共想法の基本概念を述べるとともに、コロナ禍に於いて取り入れた新しい活動方式(遠隔共想法)の3年間の進捗状況を説明しました。
 当日は、2月14日に共同研究契約を締結した岸和田市の関係者の方々、国立情報学研究所の宇野毅明先生に加えて、協働事業者(埼玉県の認定NPO法人きらりびとみやしろ、茨城県の介護老人保健施設マカベシルバートピア、大阪府の有限会社野花ヘルスプロモート)、お江戸共想法の参加者、理化学研究所の関係者、そして市民研究員の延べ38名が参加、知見の共有や討議を行いました。長引くコロナ禍の中でのオンライン開催もはや4回目となりましたので、時宜を得た鈴木晃市民研究員の司会により、お昼休みを含めた5時間のプログラムはスムーズに進行しました。

合同研修会参加者

それぞれの発表報告の概要を順にご紹介いたします。
【協働事業者 野花ヘルスプロモート 令和4年度野花共想法実施報告】 

野花ヘルスプロモート 正木慎三


 理化学研究所 革新知能統合研究センター 目的指向基盤技術研究グループ認知行動支援技術チームと有限会社 野花ヘルスプロモートと岸和田市とが協力し、「遠隔会話システムを用いた新しい社会参加とその認知機能向上効果に関わる実証研究」について共同研究を行うことになり、2023年2月14日に共同研究契約を締結したことは、先日当ブログにてご案内しましたが、それに至るまでのプロセスの詳細な説明がなされました。
 この研究は「遠隔会話システムを用いて、新しい社会参加とその認知機能向上効果に関わる実証研究」というテーマで共想法アプリの高齢者の効果を明らかにすること、及び地域での効果検証を通して遠隔ステムを用いた地域包括ケアシステムの中での新しい社会参加の可能性を模索する」ことを目的としたものです。


  2015年より、ほのぼの研究所と協働事業を行っている野花ヘルスプロモートはこれまで色々なシーンで共想法を実践してきましたが、昨年度、共想法を要支援認定を受けた方、また事業対象者を対象とした認知症発症予防サービス(日常生活支援総合事業)として実施できないかという発想を原点に、当該サービスに関する潜在ニーズ調査や大武先生との討議を重ねて計画を綿密に練り上げ、行政機関(岸和田市)への積極的な事業提案へと至りました。その後、岸和田市関係者のご理解と熱意溢れる多大なご尽力の結果、3者による共同研究契約締結に至るまでの正木さんの時系列の解説は大変印象深く、さらにこれまでの苦労とは別の意味での困難も予想される新事業へ意気込みも感じることができました。
  そして、最後には緊張感も漂ったと思える締結式の様子の報告と、岸和田市公民戦略連携デスクの 林氏、前田氏、浜崎氏と、この事業に関わる野花のスタッフの紹介がありました。
 事後のアンケートや総合討論でも、この自治体との密な連携を経ての新しい研究スタートの報告が大変印象深かったという声や、それを通して共想法がさらに拡まることへの期待感を感じることができました。

野花ヘルスプロモートの発表と、共同研究契約締結式の様子

【お江戸共想法報告2022年度】

お江戸共想法 山藤 千賀子

白鳥、睫遏渡邊、松木、井口、小谷、加藤、竹田夫妻


 2020年から開始、31回目を迎えたお江戸共想法の2022年度の報告は、コロナ禍移住先の軽井沢から参加し、そこでご夫婦で撮りため、昨夏に東京で開催された写真展で披露された傑作写真を添えてのページから始まりました。司会の山藤さんの、新規のお仲間が2名加わった等の実施状況の説明から、当日参加できた、まさに遠隔の移住先:軽井沢を含めた自宅からのメンバーと、理化学研究所に集合したメンバー10名全員が画面に登場して、一人30秒でコメントを述べる形で行われました。この1年間、共想法に参加してのそれぞれの過ごし方や見方の変化等の感想からは、お江戸共想法のモットー「楽しく参加する」を具現化しながら、活動に参加している様子が伝わるものでした。

移住した参加者が写真展で披露した傑作を表紙にあしらった報告


【協働事業者 マカべシルバートピアの活動報告】

マカベ―シルバートピア・市民研究員 永田映子


 2011年のスタートから11年、半年ごとのセッションの第19期を迎えた介護老人保健施設における通所者、入所者が参加なさる共想法やお話の会の実施者として、特に18期の実施を中心に説明がありました。新型コロナ感染者が施設で初めて短期入所者から数名発生、また自身も感染という過酷な経験をしながらも、タイムリー、かつきめ細かく応じて、参加方法の工夫、参加者対応を行い、予定通り、実践をこなしたという報告に、アンケートでも昨年同様感服させられたという声がありました。また、加齢に伴う実施者の健康管理の大切さも実感したことでした。
 実施者として、人生の楽しみ方が控えめで、他人の話に興味を示しにくく、自分のことを中心に話すなど、共想法参加を楽しみにくい人の認知機能が低下傾向であるようだと述べました。こうした認知機能の高さと楽しむ事との相関に関して、大武先生は楽しむ力は一種の能力や技術で、高めたり身に着けたりできるものであるものの、全ての人が歳を重ねることでそれらを会得するとは限らないので、共想法実施者は楽しませるプロであるべきであり、楽しめない様子の人がいれば、楽しめるよう助けたり、興味を持たせたり、楽しむためのヒントを提供するなどの工夫も必要だと述べられました。

マカベシルバートピア報告

【ほのぼの研究所継続コース】

市民研究員 根岸 勝壽・田口 良江

 
 はじめに、根岸市民研究員が「しなやかに生きる」という年間テーマで5月のアプリケーションバージョンアップ時を除く11回実施した、月度テーマと各メンバーの話題写真を紹介しました。また嬉しいことに、賛助会員様のご紹介やそのご親族、近畿圏からのご夫婦での参加、お江戸共想法からの転入など年度末には5名のお仲間が増えたことになり、従来の継続コース参加者と市民研究員と合わせて21名と、大勢での実施であることを述べました。また、2022年度から新規参加した方には基本のテーマで、これまでの経験者は年度テーマに基づいた月度テーマでと、同グループで新旧2つのテーマで行う方式を採用、さらに尋ねたかったことの確認や親睦を深めるために、隔月に各自が飲み物を用意して、フリートークを行う時間を設けるなど、嘗ての対面型共想法の良さも取り入れる等、新しい要素をも加えて共有する時間をふやしてきたことも加えました。
 次年度の大きな目標として、市民研究員は誰もがWI-FIやスマホ等の不測の事態にも対応できるような技術獲得のための実施者としての学習会や、参加者と共に共想法の学び直しの会を開催し、さらなる充実した共想法の実施、さらには、実施者が拡大した場合に備えることを大きな目標としました。また、新型コロナの感染状況を確認しながら、お江戸共想法の方々からのご提案もあったような、街歩き共想法(遠隔と対面のハイブリッドを含む)実施を計画していると述べました。

 次いで、田口市民研究員が、加齢や家庭・体調の都合でスマホを使っての遠隔共想法には参加できていない、数人のメンバーの心のフレイル化を防ぎ、近いうちに実現の可能性のあるハイブリッドな方式での共想法へのご参加に対応していただくためにもと、継続参加者の有志と共に、きめ細かく交流を絶やさないようにしている事例を報告しました。

継続コース報告

【ほのぼの研究所 講演会2022年度講演会実施報告・ブログ配信実施報告】

市民研究員 鈴木晃・長久秀子


 コロナ禍のため、恒例の年2回開催の講演会をオンライン開催へと転換しての3年目の実態や、時系列の事後アンケート結果や視聴申し込み状況等から得られた結果を発表しました。
 設立記念講演会の招待講師である東北大学の瀧靖之先生も、クリスマス講演会招待講演講師の慶應義塾大学の三村將先生も、その道の権威でいらっしゃいますが、どちらの先生も専門的なことを詳細にわかりやすく説かれ、超高齢社会には様々な課題はあるものの、それをネガティブに考えることなく、高齢者自らがポジティブに生きるための知見や術を提供して下さったため、勇気や意欲を喚起していただけたという評価を伝えました。
 また、事後アンケートでの総合評価は好評を維持し、視聴者獲得や呼び戻しは見られるも、年々グレードアップするオンライン企画ヘビーユーザーの質の高いニーズ対応と、「役立つ情報を提供している」という好評ポイントの向上のためには、臨場感の演出を含めた運営スキルアップと、そのための十分な準備期間の確保を課題として総括しました。

 併せて、毎週日曜日朝に配信している担当として、1年間の配信数内訳-研究所の活動報告やお知らせをする「ほの研日誌」(9件)、共想法の話題と写真を紹介する「今日の共想法」(43件)を報告。またさらに、共想法やほのぼの研究所についての周知向上のためには、現在メインとなっているほのぼの研究所以外の拠点での共想法の話題を掲載していきたいと、協力を要請しました。

オンライン講演会実施報告

【理化学研究所による実施支援】(含むきらりびとみやしろ)

理化学研究所 岩田幸子・きらりびとみやしろ・市民研究員 野口宗昭


 午後の部は理化学研究所の「共想法は楽しい!」をモットーに常に明るく、元気よく、そして何より根気よく支援を継続中の、テクニカルスタッフの岩田さんから以下の2022年度の活動報告と今後の計画について、頼もしく熱いメッセージをいただきました。
2022年度の活動
・ほのぼの研究所継続コースの見守りと研究会への参加
・第3月曜日きらりびと共想法/第3水曜日お江戸共想法の実施
・システム不具合から写真登録やほのバリューの入力など、全ての支援
・写真の著作権チェック
・新規参加者への導入から参加に至るまでの支援
・SIMや機材に関する設定や管理及び手配等
今後の計画
・勉強会開催
・新たに和光市グループを形成する
 最後に、きらりびとみやしろの市民研究員 野口さんが、理化学研究所のサポート受けながら、従来の対面型共想法の参加者が2022年2月から、遠隔共想法に参加を開始した旨を報告しました。

理研による実施支援報告

【2022年度まとめ・2023年度方針】

ほのぼの研究所 代表理事・所長 大武美保子


 まず、「認知症予防」という目的のために2020年度のコロナ1年目からどのように考え、実践をしてきたかということを各年度の目標とできたことを振り返りました。そして、2020年度に新しく考えた「目的に即した新しいやり方」:遠隔共想法を実践、2021年度にその「実践の輪を広げる」ことを経て、2022年度はその「実施者を育む」こと、具体的には以下を目標に据えて活動したことを報告しました。
1)遠隔共想法の参加者から実施者になる
2)連携先の遠隔共想法活用の支援を行う 
 果たして、2023年度から開始する岸和田市との共同研究実験のための実施者が選定されると共に、ほのぼの研究所では市民研究員が交代で遠隔共想法を実施する体制ができるという大きな成果を得て、さらに、遠隔共想法終了後にお茶の時間を取り入れたり、拠点以外の地域からやご紹介で新規に参加された方々と新旧混合のテーマで行うなど、新しいやり方も取り入れることもできた成果を発表しました。
 さらに5年ごとの共想法をシーズととらえて据えた各タームのテーマと、ほのぼの研究所の活動の5つの柱(実施・普及・連携・育成・研究)とをリンクさせて、活動の進捗状況を説明しました。
 そして、2022年度から始まった第4ターム(テーマ:「 試験農園を各地、各国に 農園(営利事業)の立ち上げを支援」)の2年目(コロナ禍4年目・(With/After))である2023年度の方針のテーマを「新しいやり方を作る」とした上で、以下のように具体的な活動案を示しました。

2023年度の方針

 なお、大武代表理事・所長は昨年8月に採択されたムーンショット型研究開発事業の目標3の分野において採択された「ありたい未来を共に考え行動を促すAIロボット」プロジェクトのプロジェクトマネジャーとしての研究にも参加しているため、その研究概要や今後の活動の関連性についても解説しました。

ムーンショットプロジェクトの研究イメージ

【2022年度の活動概要(外部連携)】

理化学研究所 小暮 純生


 小暮先生からは、理化学研究所とほのぼの研究所の2022年度の2大トピックスをはじめとする、様々な研究への支援、外部連携の報告がありました。まずコロナ禍の影響やさらなる研究に繋げるために、主要共同研究のうち2023年3月31日期限だった和光市との「高齢者の認知機能脆弱予知予防」研究と、飲料メーカーとの「お茶によるコミュニケーションが気分、QOLに与える影響」研究が、前者が2025年3月31日、後者が2024年3月31日までに延長された報告がありました。
 また先に報告のあった岸和田市と有限会社野花ヘルスプロモートと理化学研究所の認知行動支援術チームとの2025年3月31日までの共同研究契約締結までの経緯やその概要、役割分担などを説明され、野花ヘルスプロモートご担当の多大なご尽力に感謝の意を述べられました。
 また、研究支援として2021年度のSBIRフェーズ1の支援事業である「高齢者の認知機能訓練を目的とする対話ロボット技術開発に向けた対話データの解析」研究の終了後フォローアップ支援を挙げられました。

 そして最後に、2022年度の大きなトピックスの一つである、大武先生がプロジェクトマネジャーとして採択されたムーンショット型研究開発事業目標3の分野において採択された「ありたい未来を共に考え、行動を促すAIロボット」のプロジェクトについての構想策定をはじめとして多面的な連携サポートに携われたと述べられました。当該のプロジェクトは”自分の想いや考えを言葉にして気づきを得て、よりよく生きるための行動ができるよう促す、行動変容支援 ロボットを開発する。会話での言葉や様子から、多くの人の知恵や知識、体験を収集し、特定の人の気持 ち、考え、価値観にあった逸話や声掛けを通じ、新しい視点や方法を提示して、行動を促す技術を開発することにより、2050年には、「ありたい未来を共に考え、そのための行動を促す2025年までにAIロボット」の実現を目指す”ものだと解説をされました。

【ご参考】理研AIPニュース
ムーンショット型研究開発事業に採択されました「2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現」

【国立情報学研究所】

国立情報学研究所教授 宇野 毅明


 研修会最後の発表は、ムーンショット型研究開発事業の大武先生のプロジェクトでの共同研究者でもいらっしゃる、国立情報学研究所・総合研究大学院大学 宇野毅明教授にお願いいたしました。先生のご専門は情報学のアルゴリズムとデータマイニングで、最近は色々な分野の研究者が議論して、新しい考えを見つけ出す場を作って研究していらっしゃると自己紹介がありました。そしてご自身が携わられたデータマイニング分析で得られた、愛媛県の自治体IT婚活においてお見合いにおける受け率が上った理由として得られた、想定外の結果や、新型コロナウィルスのワクチンに関する、ツィッターのビッグデータから接種率が高まった理由の変遷などを、興味深い事例としてご紹介下さいました。

 ムーショット研究プロジェクトとの共通のテーマは、「世の中の課題を解決するために行動変容を起こさせるためにはどうしたらいいか」ということ。当該研究における基本となるツールである共想法による行動変容は、共想法に興味のない人をいかにして参加に導くかが課題のひとつでもあるも、(直近の実施者へのインタビューでは)共想法に参加する楽しさや意義を効果的に説明し、参加をいざなうための言葉を見出し切れていないのが課題ではないかと思われたとして、それらを追求して行動変容を導くための研究を引き続き進めていきたいと抱負を述べられました。共想法の実践・参加に携わる身として、活動の意味や意義を見直す契機にもなったことでした。

宇野先生の資料


 10分間のティーブレイクを挟んでの総合討論の時間は、多忙な業務時間を割いてご参加いただいた岸和田市の職員の方をはじめ、参加者全員が感想を述べ、質疑応答を交わしました。宇野先生の講話に続く形で、それぞれが魅力を実感しながらも、それを言葉でうまく表し、他の方々の参加お勧めにつながらせにくいとされる共想法について、実施者や参加者、そして新規の参加者やお勧めに成功した人と、それぞれの立場から、ネックになる要素やお勧めに効果的になるかもしれないヒントやキーワードを少し見出すことができました。また実施者からは、今後参加者が増えた場合の運営上の課題についても、積極的な提案も多く出されました。 
 また、2023年度から、SNSを通して共想法のアピール度向上に協力して下さる予定の強力なサポーターのご紹介もあり、心強く感じました。

 久しぶりに、またお初に、画面を通しての対面を果たし、様々な立ち位置を確認、理解すると共に、参加者それぞれが2023年度の課題や責務を念頭に、「新しいやり方」を追求する1年になることを共有することのできた研修となりました。

市民研究員 長久 秀子

ほのぼの研究所代表理事を務める大武美保子の所属する理化学研究所と、2015年より、ほのぼの研究所と協働事業を行っている有限会社野花ヘルスプロモートと、岸和田市の三者が、共同研究契約を締結し、岸和田市において、共想法に関する実証研究を行うことになりました。この共同研究は、ほのぼの研究所と野花ヘルスプロモートとの協働事業が出発点となっていることから、当研究所ウェブサイトでご紹介します。

以下、岸和田市役所公式ホームページ、報道発表「国立研究開発法人理化学研究所と有限会社野花ヘルスプロモートとの共同研究契約締結式を執り行いました」の記事より、岸和田市の許可を得て、編集、転載します。


理化学研究所 革新知能統合研究センター 目的指向基盤技術研究グループ認知行動支援技術チームと有限会社 野花ヘルスプロモートと岸和田市とが協力し、「遠隔会話システムを用いた新しい社会参加とその認知機能向上効果に関わる実証研究」について共同研究を行うことになりました。2023年2月14日に、岸和田市役所において、共同研究契約締結式が行われました。
 
 共同研究は、共想法アプリケーションの高齢者への効果を明らかにすること、及び地域での効果検証を通して遠隔システムを用いた地域包括ケアシステムの中での新しい社会参加の可能性を模索することを目的とします。
 岸和田市在住の認知症のない高齢者から介入プログラム参加を募り、ランダム化比較試験を行います。介入群は、アプリケーションを用いて自宅で他の参加者とのグループ会話プログラムを定期的に行い、その認知機能への効果を非介入群と比較することで検証します。加えて、遠隔で実施する会話プログラム遠隔で実施する会話プログラムが、孤独感など高齢者の社会的健康に寄与するかを明らかにしていきます。
 
 理化学研究所革新知能統合研究センター 目的指向基盤技術研究グループ認知行動支援技術チームは、高齢者の認知機能低下を予防するために、認知予備力を高める認知行動支援技術を重点的に開発や写真を用いた会話支援技術『共想法』に立脚した会話支援技術を開発し、人間の認知面、心理面に与える影響を評価するなどの研究を行っています。

 2023年2月14日(火)に執り行われた共同研究契約締結式には、岸和田市 永野 耕平 市長、有限会社野花ヘルスプロモート 代表取締役 冨田 昌秀 氏、理化学研究所 革新知能統合研究センター 認知行動支援技術チーム チームリーダー 大武 美保子(ほのぼの研究所 代表理事・所長)が出席しました。

岸和田市における共同研究契約締結式


永野 耕平 市長 コメント
全ての方が幸福に生きていくことが我々の願いです。科学技術を活用し人の関係性を支える、技術で支えることができないところは、生身の人間で支える。すごく意義ある研究を岸和田市で実施していただけることに感謝しております。我々と一緒に歩んでいただいて成果を一緒に得たいと思います。

冨田 昌秀 代表取締役 コメント
二十数年認知症ケアに携わってきて、早い段階で専門職とつながれば、もっと進行を抑制できるのではと感じていました。共想法と出会ったときに、認知症の発症予防と進行の抑制ができるのではないかと思いました。地域住民の皆様が心も身体も社会的にも健康で、幸福度を高められる「良い状態態」を体現し、豊かな時間を得ていただけるよう私たちも尽力して参ります。

大武 美保子 チームリーダー コメント
「この研究は、人間に寄り添い時間をかけて一歩一歩進めていくものです。岸和田市の皆さんからどのようなお話が飛び出すのだろう、と今からとても楽しみにしております。世界に誇る文化の発信地である岸和田市で一緒に世界に飛び出していける、皆さんに使っていただける技術、手法になっていけたらと願っております。
  2022年12月20日(火)13時30分より、ほのぼの研究所クリスマス講演会を開催いたしました。新型コロナウィルス感染拡大がいまだに収束に至らないため、一昨年度の設立記念講演会から開始したオンラインでの講演会は、今講演会で6回目となりました。
今講演会は、「超高齢社会におけるサクセスフルエイジング」と題して、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室教授の三村將先生を招待講演講師としてお迎えし、「招待講演」「基調講演」「両講師の対談」「交流会」の4部形式としました。

2022年クリスマスオンライン講演会チラシ

 大武美保子弊所代表理事・所長の開会挨拶に続き、東京都新宿区信濃町の慶應義塾大学医学部の研究室から、三村先生にご登壇いただき、「超【幸齢】社会をどう生きるか」と題した招待講演が始まりました。

招待講演講師 三村將先生

 三村先生は1984年慶應義塾大学医学部をご卒業後、同年慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室に入局。1992年〜1994年までボストン大学医学部行動神経学部門・失語症研究センター・記憶障害研究センター研究員として研究に従事。帰国後は東京歯科大学市川総合病院精神神経科講師として臨床及び研究を行う。2000年より昭和大学医学部精神医学教室に勤務。講師、准教授等を経て、2011年より現職である慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室教授に就任。専門は老年精神医学、神経心理学。認知症や老年期うつ病の診療、研究に従事していらっしゃいます。
また、日本高次脳機能障害学会理事長、日本うつ病学会理事長、日本老年精神医学会副理事長、日本神経心理学会理事、日本精神神経学会理事、安全運転医療学会理事等の要職に就かれていらっしゃいます。

 今回の講演会は、昨年11月に三村先生が会長として主宰された日本認知症学会学術集会/日本老年精神医学会(同時開催)「人生100年時代の認知症を考える」の会長講演「超高齢社会のサクセスフルエイジング」を今講演会のタイトルとして使用させていただくお許しを得ました。またその講話の一部を「超【幸齢】社会をどう生きるか」と題して、超高齢社会日本に於いて、高齢者が幸福に生きるということはどういうことか、また、あまり高いとはいえない日本の幸福度を高めるためにはどうするべきか、社会がどうなるべきなのかということを改めて考えるために、携わられた疫学コホート研究結果を含めた、専門的かつ広範な知見を、以下2点に絞って話題提供をしていただきました。
(1)サクセルフルエイジングとレジリエンス
(2)エイジングと心理社会的要因

招待講演演題

 まず、幸福とは、人それぞれ異なるものの「瞬間的・直接的な快・不快の感情を超越してしみじみと、あるいはほのぼのと感じられる持続的で穏やかな気分状態」であると定義付けられました。さらにそういった状態で歳を重ねていくこと:よく生きるということがサクセスフルエイジングであり、日本を含む高齢社会においては、幸福寿命を延伸する鍵となる概念であると位置づけ、三村先生は「幸齢社会」という造語を使われていると述べられました。
 そして、サクセルフルエイジングは、病気を健康と同じように評価し、認知的健康(記憶や遂行機能どの神経心理学的機能だけでなく、認知の枠組みや智恵を含む)と感情的健康(うつや不安などの否定的な感情がないだけでなく、肯定的な感情や統御などのストレス対処も含む)をもって定義すべきだと説かれました。
 
 また、サクセルフルエイジングを考える上で欠かせないポイントとしてレジリエンス(疾病抵抗性・抗病力)について述べられました。これは人生の様々なストレスフルな状態に対する抵抗力のことを指します。「多くの高齢者は,身体的機能、経済的自立、親密な対人関係の喪失といったさまざま逆境やストレスフルな生活を送ってきた。けれども、そこから回復する過程で自己の価値や人生の意味を追求し続け,逆境から新たなことを学ぶとともにそれをきっかけに前進することができてきている。そのため、加齢に伴ってネガティブな状況が増えるにもかかわらず、高齢者の私的幸福感(ウェルビーイング)は上がる=Aging Paradoxという現象が起こっている。」と述べられました。このことから、多くの高齢者は疾患や障害を抱えながらも、サクセスフルエイジングを達成しており、言い換えればサクセスフルエイジングは「疾患や障害がない」のではなく、「疾患・障害への適応」でもあると説かれました。

自己評価による高齢者のエイジング評価

 
 次に慶應義塾大学医学部精神神経科が関連する以下のコホート研究などから得られた、エイジングと心理社会的要因の関係が紹介されました。

慶應義塾大学精神神経科の高齢者コホート
 

 ・JPHC研究からは、コーピングが将来の自殺のみならず、身体疾患の予後にも影響することが示されている
・Arakawa65+Studyでは、高いポジティブ感情、社会資源、自己効力感、レジリエンスと共に、アプローチコーピングストラテジーが抑うつの発症と負の関連を示す
・Arakawa65+Studyでは、コーピングストラテジーと海馬全体あるいは一部の容積と関連している
・Arakawa 85+及び95+Studyでは、パーソナリティと認知機能、抑うつとが関連している
・Arakawa95+Study、さらに百寿者研究では、老年的超越は認知機能低下、抑うつ、フレイルと関連している 
 
 また、認知機能と抑うつの分布を見てみると、85歳以上では認知症が25%、うつが14%、95歳以上は認知症が60%、うつが20%の領域にあるも、95歳以上になると、通常加齢とともに下がってくる幸福度に関する因子の数値がやがて上がってくるという老年的超越(物質的で合理的な見かたから、加齢に伴い、より宇宙的で超越的な視点への変換)が見られることも述べられました。すなわち老化に伴う各種能力の衰えを否定的に捉えず、現状を肯定し、主観的幸福感を抱くようになることも重要なことだと説かれました。

晩年期に現れる主観的幸福感の老年的超越

 さらに日本では、近い将来10万人以上に達すると想定される100歳(百寿者)になると、何とか生きていこうというよりも、むしろ生かされているというような超越的な感覚を持つようになるため、長生きができるのではないかと思うと述べられました。

 以上の講話を通して、これまで認識の薄かった心理社会的な加齢に伴う一連の変化を伺うことができました。そして、例え健康寿命が絶たれても、前向きな心を持ち続け、レジリエンスを高める生活を送ることで、高いQOLやウェルビーイングを保ち続けることができる可能性を確認することができました。

COI-NEXT共創の場 研究開発課題のイメージ

 そして最後に三村先生から、誰もが参加し繋がることでウェルビーイングを実現する都市型ヘルスコモンズCOI―NEXT共創の場(拠点:慶應義塾大学)において、「認知症になっても日々生き生き「寄り添う研究」のリーダーとして、「認知症になっても、やりたいことがあったら、それができるような生活、そしてそのために生きがいや悦びを維持していくには何ができるか、特に最新のAI、あるいは先端機器のようなものを使ってどのようなことができるのか」という研究を推進している旨が力強く述べられ、講話を締められました。
 
 次いで、大武美保子代表理事・所長が東京の日本橋の理化学研究所から「高齢者を見守り、声掛けをするロボットの開発」と題して、彼女が高齢者の健康の維持に資することを目的として開発しているロボットにまつわる基調講演を行いました。

基調講演演題

 まず、最初にWHO憲章「健康とは肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」に則り、高齢者の健康を「(自分や家族に)病気があっても、人生に極力支障がないように工夫して(レジリエンス)質の高い生活ができる状態」と定義づけ講話を始めました。
 そして、代表理事・所長を務める彼女の研究フィールド:ほのぼの研究所メンバーや共想法参加者、(多くが本人あるいは家族に疾病や障害がある後期高齢者)の実験研究協力や観察を通して、高齢者の認知機能維持に働きかけ、レジリアントで質の高い生活を補助するロボットの開発プロセスを、実際の使用場面の動画を用いて披露しました。

 まずロボットに何をさせるか、ロボットとの唯一の交流ツールでもあり、利用者が考えたり、話したり、行動したりするきっかけとなる「声掛け」については質の高い生活=やりたいことができるように気づかせるため、綿密なプロセスを経て「言葉」をセレクトしていくプロセスを説明しました。

【質の高い生活を助けるためのロボットへの声掛け】の企画プロセス



【すでにしているやりたいことについて聞くロボットへの声掛け】の企画プロセス



【これからやりたいことについて聞くロボット】の企画プロセス

 また、ロボットが対応(回答)するセリフは、どのように相手が答えても、もっともらしく聞こえ、次の発言に導くように想定のセリフを多様に用意すると共に、発言するタイミングが息継ぎなのか、終話なのかを見計らう間合いを推定する技術を開発し、話のシナリオをうまく作れば、スムーズな会話が可能になり、会話において自分の考えを整理していけるということを確認できたと述べました。

 さらに、ほのぼの研究所で継続実践している会話で認知機能を育む手法:共想法のフローのうち、一番難易度の高い、参加者の話を「聞き」「質問する」という部分だけを取り出して実装したロボットを使って、高齢者宅にて共想法をしていただく実験を行ったという報告がありました。提供される話題に関する想定問答は予め登録し、多様な話題をスケジュールに添って各ロボットに配信する技術を開発したとのことで、まだ実験期間が短いものの、対面で共想法に一定期間参加した被験者と同じ種類の認知機能の数値がよくなる傾向があったとの結果を得ているとのことで、今後の実験期間や頻度を充実させての結果が期待されます。

高齢者が話を聞き質問を考えることで、認知機能を育むロボット
共想法形式の会話の「聞く」「質問する」機能を実装

 今回紹介したロボットは疾病や障害があっても、人生に支障がないように、具体的には認知機能をなるべく下げないように、したいことができるようにと企画設計されているため、三村先生のご講演でもご紹介のあったCOI-NEXTプロジェクトに参加して、さらに研究、開発を続けていきたいという抱負を述べて終話いたしました。
https://www.health-commons.com/
JST共創の場形成支援援プログラム
https://www.health-commons.com/randd#theme4
誰もが参加し繋がることができるができることでウェルビーイングを実現する都市型ヘルスコモンズ共創拠点

 休憩を挟んでの三村生と大武所長との対談では、まず、三村先生が大学ご入学時には心理学科に籍を置かれるも、今のご専門は老年精神医学,神経心理学の研究に、大武所長が工学部出身ながら認知症予防の研究にと、多くの転機を経て辿りつかれた経緯をお互いに披露。その都度の様々な研究者や研究との出会いが非常に有意義に働いていることを思い起こされ、共有されました

対談演題

 事後しばらく調査研究の方法、実験結果の効果測定方法等について研究者同志の熱いやりとりが続いた後、視聴者からの質問「後期高齢者の自動車運転」について、三村先生がお答え下さいました。三村先生は安全運転医療学会理事という要職に就かれ、高齢者の自動車運転についての課題をライフワークの一つとして携わってこられているだけに、現状の問題点を含めて大変詳細に、以下のようなご教示を下さいました。

1) 年を重ねるほど、運転能力、運転機能等の機能の個人差、性差が大きくなるため、運転の可否について、少なくとも年齢でしばるべきではない
2) 地方では足としてのニーズが根強く、しかも高齢者自身が運転をせざるを得ない状況があるため、認知症と診断された人は運転免許の更新ができないが、医師の記載する診断書の内容やその対応にばらつきがある等の問題点がある。またサポートカー限定免許に関しても規定が曖昧
3) 医師の診断・評価を得ながらなら、認知機能が低下していても運転可能なこともあるが、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の場合は運転は特にリスクが高い
4) 病名や年齢でしばるのではなく、運転がしっかりできる認知機能、予測力、判断力、運転操作能力が保たれているかということを、医療機関(運転評価外来など)での一定の評価を受け、公安委員会や免許証センターでの実車評価を受け、さらには同乗者の評価も参考にしながら続けていくことが大事→運転寿命の延伸→サクセルフルエイジング

 次いで、大武所長へ投げかけられたロボットの声等に関する質問には論文(下記)の提示に替えさせていただきました。会話支援手法、共想法の司会を、ロボットが行う場合と、スピーカーが行う場合に、参加者がそれぞれどのように感じるかを調査したものです。
 また、海外在住の高齢者が若々しく見えるのは、宗教的な支えもあるコミュニティに属するという社会的つながりも影響しているように思うが、ウェルビーイングの観点ではその重要度は大きいのかどうかという質問に対しては、日本は海外に比べると定着していないが、宗教的なスピリチュアリティを心理社会的要素として捉えることは非常に重要であると答えられました。
https://link.springer.com/article/10.1007/s12369-022-00925-7
Voice Over Body? Older Adults’ Reactions to Robot and Voice Assistant Facilitators of Group Conversation
(ロボットとスピーカーによるグループ会話の司会への高齢者の反応に関する研究)
 
 最後の企画:オンライン(お茶会兼)交流会は、システム上、ご参加のためにリンク先を変更していただくお手間をかけることとなりましたが、飛び入りも含めて、拠点のある関東圏はもとより、北海道からの交流会初参加の方を含めて大阪府、長野県と幅広いエリアからご参加いただきました。三村先生は時間の都合上中座されましたが、前半では、参加者のポジティブな様子を大いに感じていただけたようでした。

交流会参加との記念撮影
   

 参加者全員が、一言自己紹介、近況報告や講演会の感想などを述べ、和やかなオンラインでの対面が久しぶりに叶ったことは、一足早いクリスマスプレゼントのように、心温まるものとなりました。最後に画面上で記念撮影を行い、お開きとなりました。

市民研究員 長久秀子


                   
  2022年12月20日(火)13時30分より、ほのぼの研究所クリスマス講演会を開催いたしました。新型コロナウィルス感染拡大がいまだに収束に至らないため、一昨年度の設立記念講演会から開始したオンラインでの講演会は、今講演会で6回目となりました。 今講演会は、「超高齢社会におけるサクセスフルエイジング」と題して、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室教授の三村將先生を招待講演講師としてお迎えし、「招待講演」「基調講演」「両講師の対談」「交流会」の4部形式としました。動画をクリックすると再生が始まります。大きい画面でご覧になりたい方は、その後右下に表示されるYouTubeという文字をクリックすると、YouTubeのページが開きます。YouTubeのページからは、全画面表示が可能です。

招待講演
【超高齢社会におけるサクセスフルエイジング】超【幸齢】社会をどう生きるか 三村 將

基調講演
【超高齢社会におけるサクセスフルエイジング】高齢者を見守り、声掛けをするロボットの開発 大武 美保子

両講師の対談
【超高齢社会におけるサクセスフルエイジング】対談−三村 將×大武 美保子 「認知症の発症を遅らせ、なっても困らないためにできること」

新年のご挨拶2023

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ほの研日誌 » お知らせ
執筆 : 
NagahisaH 2023-1-1 8:00

をくずれ水仙郷

あけましておめでとうございます

旧年は、世界的な感染症流行が始まって3年を過ぎ、ロシアによるウクライナ侵攻が本格化したり、安倍元首相が銃撃されたりするなど、不穏な出来事の多い年でした。共想法による認知症予防という切り口から、ほのぼのとした社会の実現を目指す当研究所は、その実現の難しさを改めて実感しました。写真を用いた会話で想いを共有する共想法が、どのような状況に対してもしなやかに対応し、折れない心を育むことに貢献できればと願っています。2022年は、コロナ禍になってから始めたことを深化させ、質的な変化を遂げた一年となりました。活動を引き続きオンラインを中心に行い、そのことにより、参加者の輪が広がりました。皆様の御参加、御支援、御協力に感謝申し上げます。

第一に、スマートフォンおよびタブレットアプリを用いた遠隔共想法支援システムを用いて、月1回のペースで実施している、共想法継続コースに、大阪や長野など、各地から個人で参加頂くようになりました。これまでも、研究拠点である千葉から地理的な離れたところの方にも、共想法に参加頂いてきましたが、実施運営拠点となる介護施設や病院があり、そこに参加者が集まっていました。遠隔共想法支援システムにより、そのような拠点がない地域の方にも、参加頂けるようになりました。病を得て、以前ほど活発に活動できなくなった親を心配する子どもに勧められ、参加された方もいます。システムを構想した当初に想定した用途で、使って頂けることが明らかになりました。本挨拶をご覧になり、興味を持った方、また、周りに勧めたいと思われた方は、是非事務局までご連絡下さい。

第二に、研究所設立当初より、年2回ペースで開催してきた講演会をオンラインで開催し、2020年から数えて合計6回となりました。夏の設立記念講演会は、「人とのつながりで、脳を育む」をテーマとし、脳の発達や加齢のメカニズムを研究され、ベストセラーの著書「生涯健康脳」がある瀧靖之先生に、仙台からご講演頂きました。冬のクリスマス講演会は、「超高齢社会のサクセスフルエイジング」をテーマとし、第41回日本認知症学会学術集会/第37回日本老年精神医学会大会長である三村將先生に、東京からご講演頂きました。そして、2022年の新たな取り組みとして、講演会終了後に、オンライン交流会の開催に挑戦しました。招待講師の先生を囲んで、参加者全員が感じたことや考えたことを一言ずつ発言し、交流を通じて、元気を与え合うことができました。

第三に、これは共想法継続コース参加者の方の取り組みになりますが、共想法をきっかけに撮り貯めた風景写真を展示する展覧会、「二人の軽井沢・春夏秋冬」展が銀座にて開催されました。コロナ禍前に、対面で行う共想法実験にご夫妻で参加され、コロナ禍が始まって以降、オンラインで開催する共想法継続コースに参加頂いています。コロナ禍を機に軽井沢に移住されたご夫妻の、自然豊かな写真と話題を、他の参加者の皆様と共に、毎回楽しんでいます。そのようにして撮影された写真が、展示されました。共想法参加者で、展覧会を開いた方は初めて、お二人にとっても展覧会を開くのは初めてでした。

新年は、NPO法人ほのぼの研究所を設立して15年を迎える節目の年となります。共想法をきっかけに、会話だけでなく、生活行動全般を整える方法を、実践研究を通じて明らかにするとともに、より本格的な普及に向けた情報発信や、そのための仲間づくりに取り組んで参りたいと思います。本年もご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。


2023年元旦
NPO法人ほのぼの研究所代表理事・所長
理化学研究所 チームリーダー 大武 美保子

11月1日11年目初の共想法お話の会

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ほの研日誌 » 行事
執筆 : 
NagahisaH 2022-12-4 8:00
 2022年11月1日に、「長生きの薬・百薬の長」というテーマで共想法を実施しました。マカベシルバートピアの共想法(お話の会)では1人2枚の写真を使って、話題を提供していただきます。
 当日は気が付かなかったのですが、2011年11月1日開始のお話の会はで11年目に入ったことになり、おまけに半年毎のスケジュールの11回目でしたので、すべてに「1」がつく記念日となりました。 参加者のSさんの長生きの薬は、18歳の孫と司会ロボットのぼのちゃんだそうです。お孫さんは、美容院へ行ったSさんのヘアースタイルにすぐ気が付く優しい男の子です。ぼのちゃんの仏様のような優しいお顔に毎回癒されているとのことです。お話の会がなかったら、共想法の司会ロボットぼのちゃんにも出会うことがなかったから有難いとおしゃっていました。
 皆様の笑顔と興味深いお話の数々に励まされて、11年目を迎えることができました。目標の10年がとっくに過ぎていることに、我ながら驚いている今日この頃です

マカベシルバートピア 市民研究員 永田映子



オリジナル手編みキャップをかぶったお話の会のアイドルぼのちゃん

コメント:市民研究員 H.N.さん
11年目のスタート、おめでとうございます。マカベシルバートピアのご入所、ご来所の方々とのお話の会は、超高齢の方々含めて人生の先輩方のご参加が多いと伺っております。コロナ禍に限らず、楽しく、お気持ちよく、そして安心・安全にご参加いただくための様々な工夫や配慮をなさりながら、このように長く続けてこられたことに感服です。そして、お話の会を通して人生経験豊かなご参加の方々から得られたものは、E.N.さんの大きな宝物になっていることと思います。これからもずっと続きますように。
 茨城県桜川市のマカベシルバートピアでは毎月6回「お話の会」(共想法)を実施しています。通所者グループが火曜日と木曜日で、入所者はこれまでの2グループをまとめて木曜日に実施しています。
 最近、「気が長いか、短いか」というテーマで写真共想法(全体で2枚の写真を使用)を実施しましたが、私の予想に反して、90%の方が「せっかち」だと自己申告されていました。
  詳しく伺うと、中には娘さんから「杖より前に足が出ているから、危なくて見ていられない」と言われる方も。「せっかち」と思う理由は、生まれつきだから仕方がないというご意見が大半でしたが、戦争を経験されたAさんの自己分析は、明日のことは分からないからすぐやる癖がついたというものでした。それを伺い、いつも姿勢よく笑顔を絶やさない理由がわかったような思いがしました。
  このグループの皆様は、いつも出席を楽しみにして下さっていますが、会が盛り上がるかどうかは、参加される皆様の優しい思いやりに負うところが大きいと、実施者として実感させられる毎日です。

市民研究員 マカベシルバートピア 永田 映子



参加者のお話が弾む「お話の会」(共想法)

2022年ほのぼの研究所設立記念講演会

カテゴリ : 
ほの研日誌 » 行事
執筆 : 
NagahisaH 2022-8-14 8:00
 2022年7月19日(火)13時30分より、ほのぼの研究所設立記念講演会「人とのつながりで、脳を育む」を、コロナ禍以来一昨年度から継続して継続して採用しているオンライン形式にて開催しました。 
  
 招待講演「生涯健康脳」、基調講演「共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響」、対談「人とのつながりで、脳を育む」、そして今回初めての企画オンライン交流会を加えての4部形式としました。

設立記念オンライン講演会タイトル

  ほのぼの研究所代表理事・所長の開会の挨拶に続き、早速招待講演講師の東北医学スマート・エイジング学際重点研究センター 副センター長、東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之先生に、仙台市からご登壇いただきました。

瀧 靖之先生

 瀧先生は東北大学加齢医学研究所及び東北メディカル・メガバンク機構で脳の MRI画像を用いたデータベースを作成し、読影や解析をした脳MRIは、これまでにのべ約16万人に上り、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者としてご活躍です。
「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研究」など多くの論文を発表。著書は、「生涯健康脳(ソレイユ出版)」「賢い子に育てる究極のコツ(文響社)」「回想脳(青春出版社)」「脳医学の先生、頭が良くなる科学的な方法を教えて下さい」(日経BP)」始め多数、特に「生涯健康脳」「賢い子に育てる究極のコツ」は共に10万部を突破するベストセラーとなり、海外でも複数カ国語で翻訳本が出版されています 。また、テレビ東京「主治医が見つかる診療所」、NHK「NHKスペシャル」、NHK「あさイチ」、TBS「駆け込みドクター!」など、メディア出演も多数おありです。

招待講演「生涯健康脳」

 招待講演「生涯健康脳」は、投影資料を使用されず、大武所長が瀧先生に以下3つの質問を投げかけ、それに瀧先生が答えられるというQ&A方式で進められました。
Q1)脳は加齢によってどのように変化するのでしょう?
―A1)私達の日常生活を司る機能を持つ脳の体積は10代後半にピークに達し、それから萎縮が始まります。
また、判断する、記憶する、考えるといった高次認知機能は、機能の種類によって若干異なりますが、凡そ 20代後半をピークにゆっくりと衰え始めます。知識の獲得は、もっと遅くまで保たれ、それからゆっくりと落ちて行きます。

Q2)脳の加齢を早めるものには何がありますか?
―A2)生活習慣病の危険因子である:飲酒・喫煙・肥満(特に内臓脂肪型)…慢性炎症を招くものと、鬱等の心的不健康が挙げられます。

Q3脳を健康に保つには、どのような生活習慣が大切でしょうか?
―A3)下記の6つが考えられます。

脳を健康に保つための6つの要件

 以上のように、理解しやすいように、具体的に丁寧に説明して下さいましたので、事後アンケートでは、日常生活に直結する講話だったので、役だったというお声を多くいただきました。

 次いで、大武美保子代表理事・所長が東京、日本橋にある理化学研究所から「共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響」と題して、彼女が考案した会話支援手法「共想法」の説明を行うとともに、共想法を組み込んだ認知的介入プログラム(PICMOR)を用いてランダム化比較試験を実施して得られた研究結果を述べました。

基調講演「共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響」

 まず、瀧先生が脳を健康に保つための6要件として挙げられた、運動、食生活、睡眠、コミュニケーション、趣味・好奇心、主観的幸福感のうち、特にコミュニケーションに着目したこと。さらに、社会的コミュニケーションの多寡などとは別に、認知機能の維持に役立つコミュニケーションの特徴、条件を考え、それらを満たすコミュニケーションができる方法について、研究していることを述べました。

 会話(コミュニケーション)をする場合、相手の話をよく聴き、声の調子を読み取り、思いやり、注意を払い、理解することをで、加齢とともにとともに萎縮しやすいという前頭葉を使うため、脳を健康に保つための要件のひとつととらえられていますが、単なるおしゃべりではそれらが充足されていないこともあるとして、写真を通して想いを共有できる会話支援手法:「共想法」を考案。「共想法」は一連の作業通して「体験記憶」、「注意分割機能」、「計画力」を総合的に使うことで前頭葉をフル活用するコミュニケーションを確実に行うことをめざしたものだと説明しました。

PICMOR

 さらに、その効果を検証するプログラムとして、AIロボットが司会をする共想法を組み込んだ認知的介入プログラムPICMOR(Photo Integrated Conversation Moderated by Robot)を開発。それを用いた、ランダム化比較試験(共想法参加者 対 雑談参加者)から導かれた共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響を以下のように発表しました。
【認知機能に与える影響】
・共想法形式の会話参加者は、雑談に参加した場合と比べて、言語流暢性(言葉を取り出す認知機能)が向上
【脳に与える影響】
・共想法形式の会話参加者は、言語流動性の部位とその他の部位との結合が強くなっている…言葉の意味をよく理解したり、言葉を使って考えを伝えたりすることで、領域間のつながりがよくなる
・共想法形式の会話参加者は、局所(実行機能や記憶に関わる)部位の体積が、参加修了後、雑談参加者と比べて大きかった
・共想法形式の会話参加者は、白色繊維連絡(領域間のつながり)がよい…脳の信号が他の領域に伝わりやすい
 
 最後に、ほのぼの研究所においては「共想法」を通して脳の健康を維持する生活習慣獲得に関する中長期的な観点での研究、理化学研究所では、脳の健康につながるより科学的、厳密な条件を統制したコミュニケーション方法についてのを研究を行っていく抱負を述べ終話しました。

対談「人とのつながりで、脳を育む」

 休憩を挟んでの瀧先生と大武所長との対談では、まず、東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターについては、アンチ・エイジングという名称は加齢を否定することに繋がるので使うことはせず、脳には可塑性があるので、賢く、豊かに、スマートに歳を重ねていくために、基礎研究から臨床研究に至るまで様々な分野、産学連携、社会実装を通じて研究、特に、認知症予防に注力なさっている機関として紹介されました。

 ファッションや身なりを整えることは、楽しく人生を変えていくために気持ちを動かす力が大きい、すなわち行動変容のきっかけになり得るとして、コミュニケーションを向上させたり、自信や外出等の積極的行動を喚起させることが、脳を元気に保つのに大切だと説かれ、ご自身も大変気を遣われていると述べられました。
 「回想について」は、御著『回想脳』で「幸福の自家発電」と述べられているように、ストレスを解消し、過去の回想により主観的幸福感を得られる共に、単に後ろ向きの行動ではなく、その時に関わっている脳の様々な領域が将来のプランニングの時にも関わっていいる大事な領域なので、未来に向かっのポジティブな生きる力をつけるとも説明されました。
 また、子育てに関しても、知的好奇心を認知症予防にも通じる「人生の大きなドライブ」として大事であると述べられ、それを高めるためには親も知的好奇心をもって積極的に生活していることを示しながら、対象への単純接触効果を高めることが大切だと説かれました。わずか20分間の対談ではありましたが、果たしてに各世代へのスマートな生き方へのアドバイスをいただいたことになりました。

 最後の、今回初企画のオンライン(お茶会兼)交流会は、システム上、ご参加のためにリンク先を変更していただくお手間をかけることとなりましたが、飛び入りも含めて、関東圏はもとより、大阪府、長野県を含めた広いエリアから、また理化学研究所の海外からの研究者を含めた若い世代〜80歳代の多世代、様々な分野の方々に多数ご参加いただきました。
 参加者全員が、氏名、好きなモノ・コト等を語る自己紹介を手際よく行った後、視聴者が瀧先生がドラムを始められた理由と不眠について、大武チームの脳科学の研究者が脳を健康に保つために行う趣味(運動)をする場合、認知的に負荷の少ないことをする場合の効果についての質問がありました。
 多趣味の瀧先生のご自身のご経験も踏まえて、趣味はヴィゴツキーの最近接理論や能動的なものが望ましいことは真理であるが、趣味を持てることの意義やそれから派生するコミュニケ―ションや主観的幸福感等にも意義があるとご回答。不眠についてのアドバイスもいただいたところで終了時刻が迫り、2回に分けて集合写真を撮影して、皆様と画面からお別れとなりました。

 初の交流会については、まだ課題もありますが、これまでの視聴だけとは異なり、双方向で講師と参加者が交流できたことを楽しんで下さったお声が多くあり、安堵しております。いただいたご意見やアドバイスを今後に充分に活かしていきたいと存じます。

 そして、何より研究をはじめ様々な分野で超ご多忙、かつ多趣味の瀧先生には、きっと休憩時間には寸暇を惜しんで筋トレをしていらっしゃったのではないかと想像しつつ、この度の講演会に貴重なお時間とご講話をいただいたことを、心より感謝申し上げます。 
 脳を元気に保つためにすべきことは、決してたやすいことばかりではありません。けれども、ハードルを低く設定してみる、壁を取り払うとできる、やっていく・やってみると意外にできるようになるという、瀧先生から伺った脳の可塑性と信じて、改めて「やってみよう!」「やらなければ!」と元気・やる気・勇気をいただいた方も少なくないと信じております。

市民研究員  長久 秀子 



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なお、当講演会の動画は以下URLにてご覧いただけます。
【人とのつながりで脳を育む】生涯健康脳 瀧 靖之
https://www.youtube.com/watch?v=RwBICMPk4QQ

【人とのつながりで脳を育む】共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響 大武
 美保子
https://www.youtube.com/watch?v=0bGcLhiSbho


【人とのつながりで脳を育む】対談−瀧 靖之×大武 美保子
https://www.youtube.com/watch?v=dSnqCmaQTEE

また、以下でこれまでの講演会の動画もご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/channel/UCz7L-TE_oqgoLORFqNoIoZA/playlists
2022年7月19日(火)13時30分より、ほのぼの研究所設立記念講演会「人とのつながりで、脳を育む」を、コロナ禍以来一昨年度から継続して継続して採用しているオンライン形式にて開催しました。      招待講演「生涯健康脳」、基調講演「共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響」、対談「人とのつながりで、脳を育む」、そして今回初めての企画オンライン交流会を加えての4部形式としました。動画をクリックすると再生が始まります。大きい画面でご覧になりたい方は、その後右下に表示されるYouTubeという文字をクリックすると、YouTubeのページが開きます。YouTubeのページからは、全画面表示が可能です。

招待講演
【人とのつながりで脳を育む】生涯健康脳 瀧 靖之

基調講演
【人とのつながりで脳を育む】共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響 大武 美保子

両講師の対談
【人とのつながりで脳を育む】対談−瀧 靖之×大武 美保子

 7月19日13:30〜弊所設立記念オンライン講演会を開催いたします。
今回は招待講演講師として、16万人分の脳画像を見て、脳の解析・研究を続けられている脳医学者東北大学加齢医学研究所教授・東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター 副センター長の瀧 康之先生をお招きしております。お暑さの中、会場にお出かけになることなく、長い人生を身体も脳も元気に過ごすための耳よりの情報やヒントに関する講話のご視聴が可能でございます。以下チラシを覧いただきぜひお申し込み下さい。(お問い合わせ等はfrioffice@fonobono.org迄)





事務局 鈴木晃・長久秀子